JA、離脱農家に「違約金」請求 コメ争奪戦の現場で何が?

沈静化の兆しが見えない「令和のコメ騒動」の現場で、農家とJAの関係に大きな変化が起きている。桁違いの資金力と独自の販売網を持つ大手商社などが高値で農家から直接買い付ける動きが加速する中、かつてない「JA離れ」が進み、それに伴う新たな火種も生じている。現場では、静かに、しかし確実に壮絶なコメ争奪戦が加速している。

JA離れ加速と100万円超の「違約金」請求

農家の「JA離れ」を加速させる事態も起きている。秋田県横手市で水田75ヘクタールを経営する農業法人の代表、鈴木眞一さん(仮名)のもとには、JAから、契約した数量を出荷しなかった理由について回答を求める文書が届いた。「(商社との取引に変更しないと)会社が倒産するため」と正直に記した鈴木さんは、後日、100万円超の請求書を受け取った。JA秋田ふるさとは、契約を守らなかった農家に対し1俵当たり1000円の「違約金」を課したという。鈴木さんはこの請求に応じ支払った。

鈴木さんは、「会社が潰れるほどの事態だと回答したのに違約金を取るとは。会社が取り組んできた地域保全や食料供給を持続させることよりも、契約を優先するというJAのドライな対応に驚いた」と語る。「先行き不透明な状況下において、JAとの契約はリスクになると判断せざるを得ません」と、今後のJAとの関係に懸念を示した。

コメ農家とJAの関係変化を象徴する日本の水田風景コメ農家とJAの関係変化を象徴する日本の水田風景

全国的なJA集荷量の減少と背景

秋田県内では鈴木さんの他にも、複数の農家がJAから違約金の請求を受けている。こうした状況について、そのひとつであるJA秋田なまはげ(秋田市)の関係者は、「商社より値段が安かったJAに、契約通りに出荷してくれた農家がいる手前、今回の措置はやむを得なかった」と説明している。

農家がJAとの契約数量を出荷できないことは、稲の作柄が天候に左右されるため、例年起きうることではある。そのため、これまではJAも不問に付すことが多かった。しかし、2024年産米については状況が異なる。JAグループの2024年産主食用米の集荷量は、前年比14%減の179万トンにとどまり、これは全国の生産量の26%に過ぎなかった。この大幅な減少は、全国各地で商社だけでなく新たな卸業者なども産地に直接買い付けに入った影響が大きいとみられている。

この一連の出来事は、「令和のコメ騒動」の中で静かに進行する激しいコメ争奪戦と、それに伴う農家とJAの伝統的な関係の構造変化を如実に示している。JAの集荷量が大幅に減少する中、現場ではかつてない地殻変動が加速している。

参考資料: Yahoo!ニュース