夏の参院選に向け、自民党が物価高対策として国民一人あたり数万円の給付金を公約に盛り込む検討に入ったことが明らかになった。背景には、物価高で国民が苦しむ一方で国の税収が増加しており、これを国民に還元すべきだという考えがある。選挙対策委員長の発言を引用し、この検討の動きを伝える。この自民党による物価高対策としての給付金検討は、今後の焦点となる。
税収上振れを国民へ還元する考えとその論点
自民党の木原誠二選挙対策委員長は、6月9日の講演会でこの給付金検討の考えを表明した。「国民が物価高で苦しんでいる時に、国の税収だけが伸びているのはおかしく、しっかり国民に還元していくことも大切だ。即効性、実効性のある給付金を検討させてもらいたい」と述べ、税収の上振れ分を国民に還元する必要性を強調した。
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ただし、物価高による税収の上振れ分を国民に還元するという考え方には、批判的な見方もある。巨額の財政赤字が存在する現状では、税収上振れ分は借金削減に充てるべきだという意見が根強い。また、物価高が実質的な増税となる「インフレ税」の問題に対処するには、課税最低限や税率区分を物価に連動させるなど、税制そのものの見直しを行うべきだという論点も存在する。
過去の検討経緯と今回の規模予測
実は、政府・与党は今年4月にも、トランプ関税や物価高への対策として、国民一律3万~5万円の給付金を一時検討していた。しかし、「バラマキ」との批判を踏まえ、この時は見送られている。その後、野党だけでなく与党内の一部からも消費税減税を求める声が高まったが、財政環境への悪影響を懸念し、自民党幹部や石破内閣は消費税減税に反対し、党内の意見を抑え込んだ経緯がある。
こうした中、参院選での「目玉政策」がないことへの不満が与党内で強まったことが、自民党幹部および石破内閣が再び給付金の実施検討に踏み切った背景にあるとみられている。ただし、石破内閣は赤字国債の発行に頼る形での景気対策には否定的な姿勢を示しており、今回の給付金は財源が確保できる範囲内での実施となる可能性が高い。現時点では、税収の上振れ分を給付金の財源とする考えが示されている。
昨年7月に発表された2023年度決算では、税収は当初見通しを2.5兆円上振れた。この主な要因は物価高と分析されているが、物価高の傾向は現在も続いている。これらの点を踏まえると、今回の給付金の規模は一人あたり2~3万円程度、総額では2.5兆円~3.8兆円程度になるのではないかと推測される。
夏の参院選を控え、自民党内で物価高対策としての給付金実施が再び検討されている。税収上振れ分を財源とし、国民への還元と選挙対策を両立させたい狙いがあるとみられる。しかし、財政赤字や税制改革による対応を優先すべきという意見もあり、今後の議論の行方が注目される。