米実業家イーロン・マスク氏は先週、ドナルド・トランプ前大統領の弾劾を求める発言をしたが、今週に入り態度を一転させ、政権を称賛する姿勢に戻した。この急激な変化は、ロサンゼルスで移民税関捜査局(ICE)による滞在資格のない移民の一斉摘発に端を発した抗議デモがきっかけとなった。
記者団に話すドナルド・トランプ米大統領の発言に耳を傾けるイーロン・マスク氏(資料写真:2025年5月30日撮影)。マスク氏とトランプ氏の過去の関係を示す。
態度急変の背景と削除された投稿
マスク氏は週末にかけて、トランプ氏に対するいくつかの過激な投稿を、自身のXアカウントから削除した。これには、弾劾を求める投稿や、性的人身売買で起訴された故ジェフリー・エプスタイン元被告の犯罪に関する文書にトランプ氏の名前があるとする主張(マスク氏はこの主張の証拠を示していない)が含まれていた。
ロサンゼルスでの政権対応を支持
マスク氏は、ロサンゼルスでの抗議デモ鎮圧のため州兵を派遣したトランプ政権の姿勢を強く支持しているようだ。バンス副大統領が「大統領は暴動と暴力を容認しない」と述べた投稿には星条旗の絵文字を追加した。マスク氏はこれまでも、トランプ政権に同調し、国境管理強化や不法移民対策を支持する姿勢を示してきた。
マスク氏はまた、トランプ氏がトゥルース・ソーシャルで、ロサンゼルスの衝突、放火、抗議デモ激化についてカリフォルニア州のニューサム知事とロサンゼルスのバス市長を批判し、「ロサンゼルス市民に謝罪すべきだ」と述べた投稿のスクリーンショットも掲載した。
政策に関する微妙な違い
しかし、マスク氏の発言が完全に好意的なものになったわけではない。現在上院で審議されているトランプ氏の国内政策法案に対しては、より微妙な形ではあるものの、反対を表明し続けている。具体的には、風刺サイト「バビロン・ビー」の「共和党、国民の投票結果とは全く逆のことをし続ける計画を発表」という記事をリポストしている。
市場の反応とテスラ株価
この態度軟化に対し、ウォール街のアナリストたちは今のところ、やや安堵感を示しており、緊張緩和が続くことを期待している。テスラの株価は9日に4.6%上昇したが、公の場で決裂する前の5日の取引開始時点と比べると、大きく下落したままだ。
ウェドブッシュのアナリスト、ダン・アイブス氏は、トランプ氏とマスク氏が今後数カ月をかけて徐々に関係を修復していく可能性は十分にあると指摘している。「結局のところ、トランプ氏はマスク氏が共和党と緊密な関係を保つことを必要としており、マスク氏も自動運転車のための連邦制度の承認など、様々な理由でトランプ氏を必要としているのだ」とアイブス氏は述べた。
トランプ氏の反応
トランプ氏は9日、マスク氏への態度をやや軟化させた。ホワイトハウスでのイベントで記者団に対し、「私たちは良好な関係を築いていた。彼の幸運を祈っている」と語った。しかし、マスク氏から電話があった場合に会話をするかについては明言を避け、「実のところ、それについてはあまり考えていない。彼は私と話したいと思っているだろうと思う」と述べた。
イーロン・マスク氏のトランプ氏に対する態度の急激な変化は、ロサンゼルスでの社会情勢緊迫化を背景に起きた。弾劾要求から政権支持へと転じたマスク氏と、彼に言及する際に態度を軟化させたトランプ氏。両者の関係は、政治情勢や個々の利害が複雑に絡み合いながら推移している。市場は一時的な安定を見せたものの、今後の動向が注目される。
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