専業主婦の年金「不公平」の声はなぜ根強い?「第3号被保険者制度」への疑問

日本の年金制度における「専業主婦の年金」、正式には「第3号被保険者制度(3号制度)」に対し、「不公平だ」という声が長年にわたり根強く上がっています。神奈川県に住む66歳の女性は、この制度に40年以上も疑問を抱いてきた一人です。大学卒業後すぐに働き始め、結婚、出産を経て子育てをしながら働き続け、約40年間、社会保険料を支払い続けた彼女は言います。「『専業主婦』というだけで、保険料を納めずに年金をもらえるなんて虫が良すぎます」。働く多くの人々が、なぜ自身が負担した保険料が、直接保険料を納めていない専業主婦の年金に使われるのか、といった疑問や不満を抱いています。

日本の年金制度、特に専業主婦の第3号被保険者制度について考え込む女性の姿。社会保険料の負担と不公平感が議論されている様子を象徴する一枚。日本の年金制度、特に専業主婦の第3号被保険者制度について考え込む女性の姿。社会保険料の負担と不公平感が議論されている様子を象徴する一枚。

第3号被保険者制度とは? 導入の背景と仕組み

3号制度は、1985年の年金制度改正で導入されました。これは、当時一般的だった「夫は外で働き、妻が家庭を守る」という世帯モデルを背景としています。全ての国民が年金に加入する「皆年金」制度は確立されていましたが、専業主婦は自身に収入がないため、例外的に保険料負担が免除される形となりました。この制度の創設には、離婚した場合などに自分名義の年金を受け取れないといった当時の課題を解消し、女性の「年金権」を確立するという重要な狙いがありました。第3号被保険者の年金保険料は、配偶者が加入している厚生年金制度全体の財源から国民年金へ一括して拠出される仕組みとなっています。これにより、個別の保険料納付は不要とされています。

働く人々から上がる「不公平」の声

しかし、この「保険料を支払わないのに年金をもらえる」という仕組みに対して、「不公平だ」「専業主婦はズルい」といった批判や議論が絶えません。AERAがインターネットで実施した「専業主婦」に関するアンケートでも、「3号廃止に賛成」という意見が多く寄せられ、特に制度の「不公平さ」を指摘する声が目立ちました。大阪に住む58歳の会社員の女性は、「なんで、働いていない人の年金の分まで、私たちが負担しなければいけないの?と思います」と率直なモヤモヤ感を語っています。また、中部地方に住む49歳の医師の女性は、大学院生時代にアルバイトをしながら国民年金をきちんと納付していた経験から、「結婚をしているからという理由だけで免除されるのはちょっと……」と不平等感を覚えたと言います。これらの声は、自身が社会保険料を納めている働く人々にとって、3号制度が納得のいかない仕組みであることを示しています。

制度への疑問と今後の議論

このように、第3号被保険者制度は、その導入時の目的とは裏腹に、社会構造や働き方の変化に伴い、「不公平」であるという批判に常に晒されています。特に共働き世帯が増加し、多くの女性が働きながら保険料を納める現代においては、保険料負担の有無によって年金受給資格が得られる現状への疑問が深まっています。この長年議論されている問題は、今後の日本の年金制度改革においても、避けて通れない重要な論点の一つであり続けるでしょう。