米国西部カリフォルニア州ロサンゼルス(LA)で発生した不法移民の摘発強化に対する抗議デモへの対応を巡り、トランプ大統領とニューサム州知事の対立が一段と激化しています。この緊張の高まりは、州と連邦政府間の権限争いを映し出すとともに、トランプ氏の強権的な志向を示唆しているとの見方も広がっています。
連邦政府による軍の動員とトランプ大統領の主張
トランプ大統領は9日、州兵の追加派遣を命じ、動員する州兵を合計約4000人に拡大しました。これに加え、海兵隊員約700人の派遣も決定しました。同日のイベントでトランプ氏は「彼(ニューサム氏)はひどい仕事をしており、知事にふさわしくない。私が軍を派遣したことを感謝すべきだ」と述べ、自身の行動を正当化し、ニューサム知事を強く批判しました。
ニューサム知事の反論と法的措置
一方、ニューサム知事はトランプ氏の対応を「混乱をあおろうとしている」と非難しています。知事は、憲法で規定された州知事の同意を得ずに州兵を動員したことは「州の主権に対する重大な侵害」であるとして提訴に踏み切りました。さらに、「トランプ氏が招いた混乱を収拾する」と強調し、約800人の警察官を追加派遣することを表明しました。
米国カリフォルニア州でのデモ対応を巡るトランプ大統領とニューサム知事の対立
地元当局の懸念
LAのバス市長は、連邦政府の介入によって州や地元政府の権限が奪われることへの危機感を表明。「私たちの街が、その検証のための試験台になっているように感じる」と述べました。LA市警トップのジム・マクドネル氏も声明を発表し、「連携を欠いた軍の派遣は、重大な輸送・作戦上の混乱を招く」と指摘。地元警察が大規模な抗議デモに十分対応できる能力があることを訴えました。
対立の背景と政治的含意
ニューサム知事は2028年大統領選への出馬も取り沙汰される民主党の有力政治家であり、共和党のトランプ氏とはかねてより対立関係にあります。今年1月のLA近郊での大規模な山火事対応、高関税政策、カリフォルニア州内の大学を標的とした政府補助金削減などを巡っても、両者は応酬を繰り返してきました。
デモ対応における軍投入について、トランプ氏は「無能な知事がいるからだ」と説明しています。しかし、トランプ氏は自身の1期目にあたる2020年9月、ABCテレビのインタビューで人種差別反対運動への対応に関して「法に従わなければならない。知事の要請がない限り、州兵を動員することはできない」と述べていました。この「心変わり」は、彼が目指す2期目の強権的な政権運営を象徴していると見る向きもあります。
今後の見通し
米メディアの報道によると、9日には南部テキサス州ダラスなどでも、不法移民摘発に対する抗議デモが行われました。この種のデモは今後、全米の他の主要都市にも広がる可能性が指摘されています。
カリフォルニア州での不法移民関連デモを巡るトランプ大統領とニューサム知事の対立は、単なる政治的な意見の相違を超え、連邦と州の権限の境界線、そして大統領権限の行使方法に関する重要な問いを投げかけています。この激しい応酬は、今後の米国内政治、特に2028年を見据えた動きにも影響を与える可能性があります。