自民党の麻生太郎副総裁が11月19日の講演で「内閣を生んだ以上は育てねばいかん」と述べ、高市早苗政権の後見役としての姿勢を示した。しかし、連立を組む日本維新の会に対しては不満の表情を見せていると報じられ、政界関係者の間で波紋を広げている。この動きは、今後の政権運営や次期衆院解散に大きな影響を与える可能性を秘めていると言えるだろう。
補正予算案と「維新嫌い」の背景
内閣が国会に提出する補正予算案は、電気・ガス代補助などの増額を求める日本維新の会の圧力を受け、18.3兆円にまで膨らんだ。昨年度の13.9兆円を大幅に上回る規模となり、財政悪化懸念から円安が加速し、国債価格も下落している状況だ。自民党議員によると、「財務省の守護神」と称される麻生氏にとって、これは「メンツがつぶされた格好」であり、面白くないというのが実情だという。
麻生氏が抱く「維新嫌い」は根深く、維新が国会議員や官僚をエリート層と見なし攻撃するポピュリズム政治を展開してきたことに、麻生氏は「品がない」と眉をひそめてきたとされる。そのため、できれば維新を切り離し、トヨタや東京電力など大企業の労働組合が支持母体である国民民主党と連携したいという強い意向が、麻生氏の頭の中には常にあったという。以前から麻生氏は国民民主党との連立を模索する筆頭格でもあった。
講演で発言する麻生太郎副総裁
参院選を見据えた連立構想
自民党関係者は、麻生氏が国民民主党との連携を望む「もっと切実な事情」があると指摘する。先の参院選で維新の獲得議席は7に留まり、自民党と維新を合わせても46議席に過ぎない。これは3年後の参院選で過半数である125議席に到達するためには、「2党で79議席」という達成がほぼ不可能な数字を意味する。一方、国民民主党は会派で非改選組を18人も擁しており、もし自民・維新・国民の3党連立が実現すれば、過半数までのハードルは「3党で61議席」まで大幅に下がる。これは3年後の参院選を見越して、国民民主党を党内に取り込む戦略の一環だと見られている。
麻生氏が描く「衆院解散カレンダー」
麻生氏は衆院解散についても独自の持論を持っているとされ、その念頭には具体的な「カレンダー」が存在するという。自民党関係者によれば、麻生氏は1月中旬に自民・維新・国民の3党連立を発足させ、直ちに衆院を解散、2月中に投開票を行うというシナリオを描いているようだ。この構想は、1990年に海部俊樹内閣が1月解散、2月選挙で大勝利を収めた事実を踏まえているとみられる。また、2008年に自身が政権発足直後の解散断行をためらい、その後求心力を失った苦い教訓も背景にあるとされる。
この麻生氏の描くスケジュールには一定の合理性があるとも補足されている。参院は現状、自民党と国民民主党の両党で125議席と過半数に達しており、維新の力を頼らずとも安定した多数を確保できる。高市内閣の支持率が高いうちであれば、衆院選で自民党と国民民主党を合わせて過半数を獲得し、安定した政権への道筋が見えてくるという計算が働いているのだろう。
麻生太郎副総裁の政治的駆け引きは、高市政権の将来だけでなく、日本の政界全体に大きな影響を与える可能性を秘めている。日本維新の会に対する不満、国民民主党との連携模索、そして具体的な衆院解散の「カレンダー」が示すものは、麻生氏の長期的な政権戦略と、次期選挙を見据えた緻密な計算である。





