宇宙誕生ビッグバン以降、観測史上最も強力な爆発現象が検出されました。この現象は「極端中心核トランジェント(ENT)」と名付けられ、超大質量ブラックホールが大質量星を引き裂く際に発生することが判明しました。
ENTとは何か?
ENTは、これまでに観測された中でも極めて珍しい新種の爆発現象です。その明るさは非常に強烈で、一般的な超新星100個分を上回るエネルギーを放出しているように見えます。
ブラックホールの重力は光さえも脱出できないほど強力ですが、特に超大質量ブラックホールは銀河の中心に位置し、普段は姿が見えません。しかし、宇宙を漂う恒星が不運にも接近しすぎた場合、その存在が明らかになります。ENTはこのように普段は見えない休眠状態の超大質量ブラックホールを垣間見る手がかりとなる可能性があります。
これまでの爆発現象との違い
学術誌Science Advancesに掲載された研究論文の筆頭執筆者、米ハワイ大学天文学研究所(IfA)の博士課程大学院生ジェイソン・ヒンクル氏は、「研究チームは長年、恒星が引き裂かれる潮汐破壊現象を観測してきましたが、ENTはまったく異なり、明るさが通常見られるものの10倍近くに達する」と述べています。
この高エネルギー現象は単に一瞬で終わるものではありません。ENTは明るさのピークに達するまでに100日以上かかり、その後ピーク時の半分に減光するまでに150日以上を要する場合があるほど、長時間にわたって持続します。
潮汐破壊現象との比較
潮汐破壊現象では、超大質量ブラックホールが恒星を細長く引き裂く「スパゲッティ化」によって明るい閃光が発生しますが、ENTはこれをはるかに凌駕します。
筆頭執筆者のジェイソン・ヒンクル氏はさらに、「ENTは、通常の潮汐破壊現象よりもはるかに明るいだけでなく、明るい状態が何年も持続し、現在知られている最も明るい超新星爆発のエネルギー放出量をはるかに上回る」と説明しています。この極めて強力な閃光は銀河の中心で発生し、これまでに観測されたどの爆発現象よりも膨大なエネルギーを放出します。
ENTのメカニズムと希少性
ENTは、超新星の1000万分の1以下という極めて低い頻度で発生します。これは、太陽質量の3倍以上の大質量星が超大質量ブラックホールに極めて接近しすぎた場合に起こる現象です。大質量星は潮汐破壊によって引き裂かれ、その結果、超新星の100倍以上のエネルギーが放出されます。
宇宙最強爆発現象ENTのメカニズム:ブラックホールによる恒星の潮汐破壊の想像図
ENTが他と異なっている点は、その進行速度です。天文学者はENTを通じて、大質量星が超大質量ブラックホールに「食べられる」様子を長期間にわたり詳細に観測することが可能になります。
今回発見されたENTは、宇宙の極限環境で起こる現象への理解を深める画期的な手がかりとなります。その驚異的なエネルギーと持続性は、超大質量ブラックホールの活動や恒星との相互作用に関する新たな知見をもたらすことが期待されています。
出典: Forbes Japan / Yahoo!ニュース (https://news.yahoo.co.jp/articles/7b5441effbb6406be979b7f8b79a142939d0309f)