旧ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)の藤島ジュリー景子元社長が半生と騒動の裏側を語った独白本「ラストインタビュー 藤島ジュリー景子との47時間」の詳細が10日、出版元の新潮社の公式サイトで明らかになった。ミステリー作家の早見和真氏が47時間をかけてインタビューした内容で、368ページに及ぶ。7月18日に発売され、この日、冒頭の50ページが先行公開された。この書籍では、性加害問題、SMAP解散騒動、そして自身の謝罪会見時の秘話などが赤裸々に語られている。
藤島ジュリー景子氏の独白本「ラストインタビュー」の表紙。帯には告白内容の一部が記されている。
出版に至った理由
出版のタイミングについて、ジュリー氏は「(性加害問題の)被害者の皆さんに対する補償の枠組みが整ってきたこと、私自身、心と頭の整理ができてきたということも大きい」と説明した。また、自身への批判が続く中で、「私がいろいろ言われるのは認められる。でも、うちの娘とか、タレントとか、私が株を持っている会社の社員がいじめられるのは違うんじゃないか」と感じ始め、「こちらの言い分をしっかりと残したい」との思いが、出版を決意した大きな理由だと挙げている。
SMAP解散騒動の裏側
特に注目を集めるのは、国民的グループSMAPの解散騒動について、ジュリー氏の視点から初めて具体的に明かされた内容だ。2016年1月の解散騒動時、ジュリー氏は事務所副社長だったが、SMAPのマネジメントには直接タッチしていなかったという。
そんな中、東京・渋谷に呼び出され、故ジャニー喜多川氏や故メリー泰子氏、幹部らとの会議に出席することになった。当時、両氏とは深い溝があり、ジャニー氏とはこの席で約7、8年ぶりに口を利いたという。「私以外にもう誰もやる人がいなかった」「いきなり呼び出されて、当たり前のように(会議に)参加させられて、まるでそれまでも、ずっと私が彼ら(ジャニー氏、メリー氏)の近くにいたように話を進められていった」と、当時の戸惑いを振り返っている。
また、メリー氏が2015年の週刊文春のインタビューで、当時のSMAP担当女性マネジャーを呼び出して怒りをぶつけ、事務所の後継ぎはこの女性ではなくジュリー氏だと強調したことにも言及。「記者がいる場に社員を呼び出してつるし上げるなんて明らかにおかしい」とメリー氏の言動を批判した。ジャニー氏とメリー氏は、最後まで誰かに後を譲るつもりなどなかったとし、「単に私がその場にいなかったから(後継ぎと)言っているだけ。私は冷めた気持ちで(記事を)読んでいました」と回想している。公開された目次には「あの『SMAP×SMAP』について」などの章も含まれており、解散劇の真相がどこまで明らかになるか注目される。
謝罪会見時の「ステロイド・ハイ」
2023年9月にジャニー氏の性加害を認め謝罪した会見時について、ジュリー氏は歯痛で手術を受け、多量のステロイドを投与された「ステロイド・ハイ」の状態だったとも告白している。「薬がなかったら話すこともできなかったと思います」と振り返り、会見内容は「ちゃんと覚えています。ただ、トラウマになり、もう二度と同じことはできない」と話している。
2023年9月、性加害問題に関する謝罪会見に臨む藤島ジュリー景子氏。ステロイド投与後の状態だった時期。
嵐との関係性、櫻井翔のサポート
自身がプロデュースを手がけてきた人気グループ「嵐」についてもページが割かれている。嵐との出会いから、来春での活動休止発表について語られる他、メンバーとの距離感についても言及。櫻井翔、松本潤、相葉雅紀は対等に近い、二宮和也は近年少し距離がある、大野智は仙人みたいでなかなか会えない、と表現している。性加害問題の渦中にジュリー氏の娘の慶大入学式があり、ジュリー氏に代わって慶大OBの櫻井が付き添ったエピソードも明かされており、嵐との深いつながりが垣間見える。
この独白本は、性加害問題からSMAP解散、嵐のプロデュースに至るまで、旧ジャニーズ事務所の重要局面における藤島ジュリー景子氏の視点を詳細に伝えるものだ。長年の沈黙を破り語られたその内容は、日本のエンターテインメント史における大きな出来事の一端を明らかにする、注目すべき一冊となるだろう。