衆院憲法審査会は28日、今国会3回目となる自由討議を行った。ただ、与野党議員による欧州視察を踏まえた討議にとどまり、憲法改正に向けた議論が深まったとはいえない。改憲手続きを定めた国民投票法改正案の成立も見送りとなる公算が大きく、改憲をめぐる状況は停滞が続いている。
「広い範囲で各委員が意見を開陳して議論ができたことは良かった」
自民党の新藤義孝与党筆頭幹事は審査会後、記者団にこう語った。ただ、改憲の必要性を訴える与党に対し、野党は慎重な姿勢を崩さず溝は埋まらなかった。
実質的な議論にあたる自由討議は、今国会が始まるまで約2年間行われてこなかった。安倍晋三首相が具体的な改憲スケジュールを示し、自民党が憲法9条への自衛隊明記など4項目の改憲案をまとめたことに野党が反発、議論を拒否してきたためだ。今国会では3回の自由討議が行われており、審査会の幹事を選任するだけでも与野党の合意が難航していた昨年の状況に比べれば「大きな前進」(自民党幹部)といえる。
ただ、3回の自由討議はいずれも9月に行われた欧州視察に関する内容で、野党が応じやすい事情もあった。約1300万円の国費を投じた視察の議論まで拒めば、世論の批判を浴びかねないからだ。
実際、前提なしの自由討議に野党は今でも及び腰だ。自民党の改憲案を示されれば、改憲原案の作成や発議に向けた動きにつながりかねないと警戒する。自民党の衆院憲法審幹事は「野党が乗れる範囲で審査会を動かしていくしかない」と漏らす。