ファーウェイ任正非氏、米制裁下のAIチップ開発語る「米は成果を誇張」

中国最大の通信機器メーカーであるファーウェイの創業者、任正非会長は、同社における人工知能(AI)チップ分野の成果が米国によって誇張されているとの見解を示しました。任会長は6月10日、中国共産党機関紙である人民日報のインタビューに応じ、ファーウェイのアセンドチップに対する米国の輸出規制措置の影響について問われました。

「中国にはチップを作る会社が多く、そのうち多くの企業が成功を収めており、ファーウェイはその中の1社にすぎない。米国はファーウェイの成果を誇張した」と任会長は述べました。さらに、「ファーウェイはまだそれほど素晴らしいわけではなく、努力すれば彼らの評価に到達できる。我々の単一チップは依然として米国より1世代遅れている」と自己評価を加えました。

米国による制裁措置とその影響

任会長のこの発言は、前月、米国政府がファーウェイのアセンドチップを世界のすべての国が使用すべきでないとの方針を発表したことと関連しています。米商務省産業安全保障局(BIS)は5月13日、「いかなる国であれ、ファーウェイのアセンドチップを使用すれば米国の輸出規制に違反することになるだろう」と発表しました。これに対し、中国は「一方的な嫌がらせだ」と非難し、こうした措置を実行した組織・個人に法的責任を問うと警告していました。

ファーウェイのAIチップ開発戦略

任会長はインタビューで、米国の制裁下で高性能チップを開発するためにどのような努力をしているかについても言及しました。「我々は数学で物理学を補完し、非ムーアの法則でムーアの法則(半導体性能が18~24カ月ごとに2倍になるという法則)を補完し、クラスターコンピューティングで単一チップを補完する。これを通じて結果的には実用的な状態を達成できる」と説明しました。

中国深圳のファーウェイ本社でインタビューに応じる任正非氏中国深圳のファーウェイ本社でインタビューに応じる任正非氏

困難があるかとの質問に対しては、「困難がないわけがない」と認めつつも、「中国は中低級チップで機会を得ることができる。中国の数十、数百のチップ会社はいずれも熱心に努力しており、特に化合物半導体で機会がもっと大きい」と述べました。ロイター通信は、ファーウェイの先端チップ製造努力に関連し、任会長が公の発言をしたのは今回が初めてだと報じています。

研究開発への巨額投資と基礎理論の重要性

任会長は、毎年1800億元(約3兆6322億円)を研究開発に投資していることに触れ、そのうち約600億元は基礎理論研究に向けられており、審査を受けない資金であることを明らかにしました。残りの1200億元は審査を経て製品研究開発に投じられるといいます。彼は基礎研究の重要性を力説し、「(基礎)理論がなければ新たな進展を成し遂げることはできず、我々は米国に追いつくことはできない」と語りました。ファーウェイは2019年に米国の制裁により海外の先端半導体技術の導入が難しくなって以来、独自に半導体能力を強化するための努力を続けてきました。

中国の未来とAIへの展望

任会長はこのほか、AIと中国の未来について、「人工知能は人類社会における最後の技術革命になるかもしれない。中国は多くの長所を保有しており、懸念する必要はない」と強調しました。さらに、「中国の製造業分野で人工知能の活用が非常に速い。多くの中国モデルが誕生するだろう」と付け加えました。その上で、「国が発展するほど、我々はさらに発展するだろう。我々は必ず封鎖を突破し、偉大な復興を実現することになるだろう」と主張しました。

異例のインタビュー掲載と背景

任会長のインタビューが人民日報の1面に掲載されたことは異例です。今回のインタビューは、米中貿易代表団が6月9日にロンドンで交渉を継続している最中に公開されました。


参考資料

  • 人民日報 (Renmin Ribao)
  • ロイター通信 (Reuters)
  • 米商務省産業安全保障局 (Bureau of Industry and Security, BIS)