兵庫県知事ら3人を守秘義務違反容疑で刑事告発 第三者委報告踏まえ、弁護士82人の異例体制

兵庫県の斎藤元彦知事ら3人について、地方公務員法(守秘義務)違反の疑いで神戸地検に対し刑事告発が行われました。告発状を提出したのは、神戸学院大学の上脇博之教授です。上脇教授は10日の会見で、「知事や副知事の命令や認容があって初めてできた、組織的な犯罪だと考える」と述べ、知事らを強く批判しました。今回の告発は、代理人弁護士が82人という異例の体制で行われています。

告発内容の詳細

告発状が指摘するのは、前総務部長である井ノ本知明氏が昨年4月、職務上知り得た秘密情報を県議3人に漏洩したとされる行為です。さらに、斎藤知事と前副知事の片山安孝氏は、この漏洩を命じたり、そそのかしたりした疑いがあり、いずれも守秘義務に違反したとされています。

漏洩されたとされる秘密情報は、斎藤知事らを内部告発する文書を作成した、故人である元西播磨県民局長の私的な情報です。

第三者委員会の調査結果

県が設置した第三者調査委員会は今年5月、この私的情報が地方公務員法上で保護されるべき「秘密」に該当すると認定しました。その上で、前総務部長による情報漏洩の事実を認め、「知事や前副知事の指示だった可能性が高い」とする報告書を公表しています。

また、別の第三者委員会は、告発文書に記載された疑惑の当事者である斎藤知事らが「告発者捜し」を行ったことは、公益通報者保護法に違反するとの見解を示しています。

知事の主張と反論

これらの調査結果に対し、斎藤知事は情報漏洩への指示を否定し、「対応は適切であった」との主張を継続しています。

一方、告発した上脇教授は会見で、「知事は第三者委員会の報告を『受けて、止めている』。つまり受け入れていない」「告発者捜しをしなければ漏洩もしていない。どう考えても違法に違法を重ねている」と述べ、知事の姿勢を批判しました。

異例の弁護団体制

代理人の徳井義幸弁護士は、今回の情報漏洩行為の目的について、「正当な告発を告発人の人格攻撃によって抑圧する、弱めることを目的としたことは明らかだ」と述べています。

神戸地検への告発状提出後、会見で兵庫県知事らを批判する上脇博之・神戸学院大教授神戸地検への告発状提出後、会見で兵庫県知事らを批判する上脇博之・神戸学院大教授

徳井弁護士によると、交流のある弁護士らに告発への賛同を呼びかけたところ、わずか2週間足らずで82人もの弁護士が集まったといいます。この弁護団は近畿圏にとどまらず、北海道や東京といった遠方の弁護士も名を連ねており、「これほどの人数が短期間で賛同したのは異例」な状況です。徳井弁護士は、この広範な賛同の背景には、「知事の言動への違和感が、県を越えて広く共有されているのではないか」との見方を示しました。

告発状の原案を確認し、その趣旨に賛同して代理人となった神保大地弁護士(札幌弁護士会所属)は、「権力を持った公務員による、権力を使った違法行為は、司法によって是正されるべきだ。これは兵庫県だけの問題ではない」と語り、今回の問題が地方自治体の枠を超えた、より大きな権力濫用の問題であるとの認識を示しました。

まとめ

今回の刑事告発は、兵庫県知事らを巡る一連の情報漏洩問題を司法の場で問う動きとして注目されます。第三者委員会の報告書が知事の指示の可能性に言及し、公益通報者保護法違反も指摘する中で、知事は自らの適正性を主張しており、両者の見解は対立しています。82人もの弁護士が短期間で賛同した異例の体制は、この問題に対する社会的な関心の高さと、知事の対応への広範な疑問を反映していると言えます。今後、神戸地検が告発状を受理し、どのような捜査を行うかが焦点となります。

参照元: 朝日新聞社提供記事