高評価なのに低視聴率?朝ドラ『あんぱん』、関係者が語る「伸び悩み」の背景

史上最低視聴率を記録した前作『おむすび』からバトンを受け継いだ、今田美桜主演のNHK連続テレビ小説『あんぱん』は、放送開始以来、視聴者やSNSで非常に高い評価を得ています。特に放送6週目は「朝ドラ史に残る神回」と称賛されるなど、内容面では大きな支持を集めていると言えます。しかしながら、5月30日時点での平均世帯視聴率は15.4%に留まり、直近10作の中では『おむすび』に次いで低い数字となっています。なぜ、これほど高い評価を得ながらも、『あんぱん』の視聴率は伸び悩んでいるのでしょうか。今後、高視聴率を獲得する可能性はあるのでしょうか。業界関係者の分析をもとに、その背景を探ります。

朝ドラファンに響く「王道」と主演の魅力

キー局でドラマプロデューサーを務める50代男性のA氏は、『あんぱん』が高評価を得ている要因をいくつか挙げています。まず、本作が「史実に基づいた女性の半生」という朝ドラの王道テーマを描いている点です。これは、40~50代以上のコアな朝ドラ視聴者にとって非常に受け入れやすい内容であり、高い満足度につながっていると考えられます。また、『アンパンマン』で知られるやなせたかしさんとその妻・小松暢という、多くの人々になじみ深い人物をモデルとしていることも、視聴者の関心を引く大きな要因です。さらに、主演の今田美桜さんの魅力も貢献しています。彼女のハツラツとした笑顔や感情豊かな演技は、見ていて心地よく、作品に明るさをもたらしています。

主演の今田美桜(いまだ みお)さんが笑顔を見せる写真。朝ドラ『あんぱん』の高評価要因の一つ主演の今田美桜(いまだ みお)さんが笑顔を見せる写真。朝ドラ『あんぱん』の高評価要因の一つ

物語からの「離脱」を招く、人気俳優の早期退場

一方、A氏は視聴率が伸び悩む理由として、物語からキャラクターが早期に退場してしまう点を指摘しています。戦時下という時代背景をリアルに描いた脚本は見事であるものの、それが人気俳優が演じるキャラクターたちの「死」につながり、視聴者がキャラクターに愛着を持つ前にいなくなってしまう事態を招いています。ヒロイン・のぶの父である結太郎(演:加瀬亮さん)は放送開始1週目で亡くなり、蘭子(演:河合優実さん)の婚約者・豪(演:細田佳央太さん)は戦死しました。さらに、嵩(演:北村匠海さん)の伯父・寛(演:竹野内豊さん)も病死し、パン職人の草吉(演:阿部サダヲさん)も姿を消しています。戦争の悲惨さを描く上で避けられない描写とはいえ、序盤でこれだけ多くの主要キャラクターが物語からいなくなったことで、視聴者の中には「愛着が持てない」「見るのが辛い」と感じ、離脱してしまった層が少なくないようです。これまでの朝ドラでも身内の死は描かれてきましたが、特に若い視聴者層には、こうした展開が受け入れ難い傾向があると言います。

まとめ

『あんぱん』は、朝ドラらしい王道テーマ、なじみ深いモデル、そして主演・今田美桜さんの魅力によって内容面では高い評価を得ています。しかし、戦争という時代背景ゆえの主要キャラクターたちの早期退場が、視聴者の感情移入や継続視聴を難しくしており、これが視聴率の伸び悩みに繋がっていると考えられます。高い評価と低い視聴率という現状は、シビアな時代描写と、視聴者の「愛着」や「共感」を求める心情との間のギャップを示していると言えるでしょう。

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