中学受験を控えるご家庭にとって、5月から6月にかけては、志望校の説明会や文化祭などが数多く開催される重要な時期です。この機会に、お子様に本当に合った学校はどこなのかを、実際に足を運び、肌で感じ、見極めることが大切になります。しかし、漫然と参加するだけでは、学校の真の姿や教育方針を深く理解することは難しいでしょう。お子様の可能性を最大限に引き出し、成長させてくれる志望校を見極めるためのポイントや、その学校への合格に向けた過去問対策の方法については、専門家による具体的なノウハウが求められます。特に、卒業後の大学受験へのサポート体制は、学校選びにおいて非常に重要な要素の一つです。
中学受験の志望校選びのため、学校情報や説明会について調べる親子の様子
大学受験対策に関する説明会での確認事項
私立中学に通う上で、卒業後に塾や予備校に通う必要があるのかどうかは、学費以外にかかる費用を大きく左右し、ご家庭の家計にとって重要な検討事項となります。学校内で大学受験対策が完結するか否かは、経済的な負担だけでなく、お子様の学習時間の確保にも関わってきます。
例えば、東京都にある目白研心中学校・高等学校は、ホームページ上で「予備校に行く必要はありません」と明確に謳っています。この学校では、毎朝確認テストを実施し、その日の終礼で結果を返却。不合格の場合は、パソコンを使った映像学習を活用し、その日のうちに再テストを受けるシステムを取り入れています。さらに、生徒の自律的な学習を支援する「学習支援センター」には、チューターが常駐しており、生徒からの質問や学習相談に応じてくれる体制が整っています。このような具体的なサポート体制が、説明会でしっかりと確認できるかは、学校選びの重要な判断材料となります。
大学合格のための効率的なカリキュラムの重要性
かつて教育関連誌に掲載された興味深い座談会がありました。テーマは「自分の子どもに中学受験をさせるか否か」で、集まったのは東京大学の1年生たち。私立中学出身者と公立中学出身者がそれぞれの立場から意見を述べました。この座談会で、開成や桜蔭といった難関私立中学の出身者は、「絶対させるべきだ」と強く主張しました。その理由として挙げられたのが、「東大合格という目標のために、学校側が無駄のない、非常に効率的なカリキュラムを組んでくれているため、最短距離で合格にたどり着ける」という点でした。
一方、地方の公立高校出身者は、「入試直前になっても教科書の内容が一部終わっていない科目もあった」「高校3年の夏まで部活動に打ち込んでいたけれど、自分で学習スケジュールを工夫し、両立することで合格できたから、必ずしも中学受験をさせる必要はない」といった意見を述べていました。もし、学校に大学受験に向けての学力向上をしっかりとサポートしてほしいと考えるならば、学校がどの程度まで大学入試対策を自前で行っているかは、極めて重要な要素となります。外部の予備校などに頼るのではなく、独自のカリキュラムを構築し、高い実績を上げている学校もあります。神奈川県の聖光学院中学校高等学校は、自前で組んだカリキュラムの成果が顕著に表れ、2024年度入試では東大合格者数が100名に達しました。
「予備校を凌駕するほどの丁寧なサポートや魅力があるか」について自信を持つ学校は、その強みを説明会で詳細に説明し、質問に対しても具体的に回答してくれます。
生徒を見捨てないサポート体制の見極め方
ただし、大学受験に向けた効率的なカリキュラムや手厚い補習以上に大切なのは、どの生徒も学習の遅れを取りこぼさないような、きめ細やかなサポート体制が整っているか否かです。授業についていけない生徒がいるにもかかわらず、朝や放課後に行われる小テストが非常に厳格で、合格するまで帰宅させてもらえない、あるいは塾や家庭教師によるサポートを受けたいと思っても、学校の補習などでそのための時間を捻出できず、学習の遅れがどんどん深刻化してしまうという学校も残念ながら存在します。カリキュラムや補習が、生徒の実態や理解度を無視して形骸化していないか、形式だけになっていないかを確認することは非常に重要です。
学校説明会だけでは見えにくいこうした実情を把握するためには、学校行事である学園祭や文化祭などに足を運び、実際に通っている在校生に話を聞いてみるのが最も有効な手段の一つです。「先生は質問に丁寧に答えてくれるか」「授業で分からなかったところをフォローしてくれる体制はあるか」「進路相談はしやすいか」など、生の声を聞くことで、学校の教育理念やサポート体制が、実際にどのように機能しているのか、生徒一人ひとりに向き合う姿勢があるのかを知ることができます。
結論
中学受験における志望校選びでは、将来の大学受験に向けた効率的なカリキュラムや手厚い学習サポート体制が整っているかを確認することが重要です。しかし、それ以上に、生徒が授業についていけない場合にどのようなフォローがあるのか、学習面での相談がしやすい環境かなど、生徒一人ひとりを孤立させない「面倒見の良い」サポート体制が本当に機能しているかを見極めることが不可欠です。説明会で提示される理想像だけでなく、文化祭などで在校生から生の声を聞くことを通じて、学校の教育の実態を多角的に把握することが、お子様に最適な志望校を選ぶための鍵となるでしょう。
*本記事は、『中学受験 大逆転の志望校選びと過去問対策 令和最新版』(安浪京子著・ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集して作成したものです。