Fラン大学は「いらない」のか?定員割れ深刻化で問われる存在価値と高等教育の質

少子化が進む日本で、「定員割れ」が深刻化する大学、特にかつて「Fラン大学」と呼ばれた大学の存在意義が改めて問われています。Fラン大学とは、定員割れが続き、実質的な不合格者が少なくボーダーフリー(BF)状態にある大学の通称です。2024年度には私立大学の約6割が定員割れに陥る中、これらの大学の一部で中学レベルの基礎的な講義が行われていることが問題視されており、「高等教育の質」が議論の的となっています。

定員割れ大学の現状と議論される問題点

定員割れが常態化している大学、いわゆるFラン大学の現状は深刻です。日本私立学校振興・共済事業団の調査によれば、2024年度には調査対象の私立大学の59.2%が定員割れとなりました。これは約6割に相当し、前年度よりも増加しています。特に問題視されているのが教育内容です。財務省は定員割れ大学の一部で算数の四則演算や英語のbe動詞など、中学までの義務教育で学ぶ内容の授業が行われていることを指摘。「高等教育機関としてふさわしいか」と疑問を投げかけています。

中学レベルの講義が行われている大学の授業風景中学レベルの講義が行われている大学の授業風景

政府の再編方針と省庁間の対立

こうした状況を受け、政府の「骨太の方針2025」の原案には、大学に関する踏み込んだ記述が含まれています。「国公私を通じた大学の連携、再編・統合による機能強化や縮小・撤退による規模の適正化を進めるとともに、教育の質の高度化を進める」という方針です。この大学改革を巡っては、財務省と文部科学省の間で意見の対立が見られます。財務省が定員割れ大学の授業内容(義務教育レベルの内容)を問題視するのに対し、文部科学省は学び直しの内容も含まれているとして、一面的な評価は適当でないと反論しています。

データが示す少子化と大学数のミスマッチ

定員割れが続出している背景には、日本の構造的な問題があります。財務制度分科会の調べによると、1989年には18歳人口が198万人、大学数499校でした。しかし35年後の2024年には、18歳人口が半減以下の109万人となったにも関わらず、大学数は813校に増加しました。進学率の上昇と共に学生数は増えましたが、少子化による絶対数減少に対し大学が増えすぎた結果、多くの大学が学生確保に苦慮しています。私立大学の定員割れ率も1990年度の4.1%から2024年度は59.2%へと激増しています。

18歳人口と大学数の推移グラフ(1989年と2024年比較)18歳人口と大学数の推移グラフ(1989年と2024年比較)

専門家による議論と今後の展望

この問題は専門家の間でも活発に議論されています。「ABEMA Prime」の議論では、教育に携わる専門家から「子どもの数に対して大学が多すぎるため、今後は淘汰が進むだろう」という点では意見が一致しました。一方で、そうした大学の教育内容や、社会における存在価値、そして潜在的な可能性については、様々な見方や議論があることが示されました。

総じて、いわゆるFラン大学の定員割れは、少子化という社会構造の変化と大学数増加のミスマッチが引き起こした深刻な問題です。義務教育レベルの講義の是非、そして高等教育機関としての役割と質が問われる中で、政府は再編・統合を含む機能強化や規模適正化の方針を示しています。今後、大学間の連携や淘汰が進む可能性が高いですが、教育の質を維持・向上させつつ、多様な学生ニーズに応える大学のあり方については、引き続き社会全体で議論を深めていく必要があるでしょう。

参照元:

  • Yahoo!ニュース / ABEMA TIMES
  • 政府「骨太の方針2025」原案
  • 財務省 財務制度分科会
  • 日本私立学校振興・共済事業団