中国EVバブル崩壊の予兆か? BYD「隠れ債務」に高まる懸念

中国の電気自動車(EV)業界にバブル崩壊の危機が迫っているとの懸念が高まっている。特に、中国新エネルギー車(NEV)トップブランドBYDの「隠れ債務」問題が表面化し、2021年に民営不動産最大手である恒大集団のデフォルト(債務不履行)に端を発した不動産業界の崩壊と似た形でEV産業崩壊の可能性が指摘される。自動車業界において「BYDが第二の恒大になるのでは」という懸念が公式に言及された事例も現れている。

EV業界に「恒大のような会社」が存在するとの警告

BYDのライバルである民営自動車企業、長城汽車の魏建軍会長は、2025年5月23日の新浪財経CEO鄧慶旭とのトーク番組で、中国の自動車産業全体がEVや新エネルギー車に過度に依存していることへの懸念を示した。魏会長は、BYDを名指しこそしなかったものの、「EV業界に確かに恒大のような会社が存在する。まだはじけていないだけだ」と発言。この文脈から、彼がBYDを指していることは明らかであり、彼の発言は国内外のメディアで引用され、EV産業やBYDの問題への関心を高めた。

BYDの車両。同社の「隠れ債務」問題が指摘されている。BYDの車両。同社の「隠れ債務」問題が指摘されている。

魏会長は、健全なEV産業の発展には収益性や開発への持続的な投資が不可欠であると強調。一部のEVメーカーが時価総額や株価の高騰ばかりを追求し、過度に資本化している状況は、産業の安全性に対する深刻な脅威となると指摘した。彼は、「自動車産業の恒大はすでに出現している、まだはじけていないだけだ」と強く警告し、国家の柱産業として長年サポートを受けてきた自動車産業の努力を無駄にしてはならないと訴えた。

EVの深刻な赤字と資本の流れへの疑問

魏会長は、現在のEV産業の赤字が非常に深刻であり、そもそもビジネスとして成り立っていないと厳しく批判した。彼は、企業が資本を集めるだけ集めて、その資金が適切に使われず、持ち逃げされている可能性を示唆。一部の投資家はすでにEV企業の株を売却して撤退しており、残されたEV産業が今後どのように持続的に発展していくのかについて疑問を投げかけた。これは、過熱する中国EV市場の実態、特に収益性の欠如と投機的な資金流入に対する強い警告と受け止められている。

補助金制度の見直しと市場の課題

新エネルギー補助金制度についても言及し、撤回すべき時期が来れば適切に撤回されるべきだと主張した。海外市場への進出を考える際には、EVが唯一の選択肢ではないこと、EVが最も適したシナリオを見つけるべきであることを指摘。また、中国国内の中古車市場における不透明な慣行についても言及し、市場全体の健全性に対する懸念を表明した。

中国EV業界の今後の行方

BYDの「隠れ債務」問題や長城汽車会長の警告は、中国EV産業が構造的な課題と潜在的な金融リスクに直面していることを示唆している。過熱した投資と収益性の欠如は、過去の不動産バブル崩壊を彷彿とさせるリスクをはらんでおり、今後の政府の産業政策、特に補助金制度の見直しや市場規制のあり方が、業界の命運を左右する可能性がある。投資家や消費者は、中国EV市場の動向を慎重に見守る必要があるだろう。

参考資料