1965年の国交正常化以降、日本と韓国は複雑ながらも経済的に深い相互依存関係を築いてきた。日本が提供した請求権資金や円借款は、韓国の産業化初期における重要な資金源となり、日本からの資本財や中間財の輸入は、韓国製造業の基盤形成に不可欠な役割を果たした。日本のバブル崩壊後、長期の低成長に苦しむ一方で、韓国経済は急速な成長を遂げ、日本との経済的な差を縮めていった。特に近年、韓国の1人当たり国民総所得(GNI)が日本を上回る「所得逆転」という現象も観測されている。
政治問題が冷え込ませた日韓経済交流:首脳会談で復活の兆し
日韓関係は、1965年の国交正常化に伴う請求権協定に基づき、韓国が日本の資金や技術を活用して産業基盤を構築し、加工貿易型経済構造を形成した初期段階から始まった。1980年代までは比較的協力的な関係が主体であったが、2000年代に入ると、協力と競争が混在する構造へと変化していった。特に2010年代以降は、両国間の政治的な対立が経済協力のあらゆる側面に影を落とすようになる。
[
1965年の国交正常化以来の経済的相互依存関係を示す日韓間の交流イメージ](https://news.yahoo.co.jp/articles/2208666626904cbc9844b553242cb50f7f497886/images/000)
象徴的な出来事として、2018年に韓国大法院(最高裁)が日本企業に対し元徴用被害者への賠償を命じる判決を下したことへの事実上の対抗措置として、日本政府は2019年7月に半導体素材など3品目の対韓輸出規制強化に踏み切った。この日本の措置は、韓国にとって素材・部品・装置の国産化と取引先の多角化を推進し、「脱日本」戦略を本格化させる転換点となった。日本はさらに、翌月には輸出管理の優遇対象国「グループA(旧ホワイト国)」から韓国を除外。これに対抗し、韓国は日本を世界貿易機関(WTO)に提訴するなど、両国間の対立は頂点に達した。
しかし、最近は日韓の経済協力が段階的な回復局面を迎えている。2023年の首脳会談を契機に、外交関係の改善と経済分野での協力再開が本格的に動き出した。日本は韓国をグループAに再指定し、輸出規制は事実上解除された。金融面でも信頼関係の強化が見られ、同年10月には通貨危機などの緊急時に通貨を融通し合う日韓通貨スワップ協定が8年ぶりに再開された。この協定は全額米ドル建てで、上限は100億ドル(約1兆4400億円)に設定されている。さらに、同年12月には経済関係全般を包括的に議論するハイレベル経済協議も再開された。これらの動きは、グローバルサプライチェーンの再編や米中間の戦略的競争といった外部環境の変化の中で、日韓両国が「経済安全保障パートナー」としての実益を再認識した結果と言える。
韓国の「所得逆転」とその背景:日本経済「失われた30年」からの教訓
日本は1990年代初頭のバブル経済崩壊後、「失われた30年」と呼ばれる長期の経済停滞期に陥った。1991年から2000年までの年平均成長率は1%台に留まり、その後も2010年代まで低成長から抜け出すことができなかった。これに対し、同じ期間、韓国は輸出主導型の産業化と情報通信技術の拡大を原動力として成長を継続した。アジア通貨危機や世界金融危機といった外部からの経済ショックに見舞われながらも、2000年代には年平均約4%の実質国内総生産(GDP)成長率を維持し、日本との差を着実に縮めていった。その結果、両国間の「所得逆転」が発生した。
1990年代、日本の1人当たりGNIが3万~4万ドルの水準だったのに対し、韓国は1万ドル前後と日本の3分の1程度であった。しかし、昨年には韓国の1人当たりGNIが3万6624ドルとなり、日本(3万4500ドル)を上回った。名目GDPでは依然として日本が韓国より高い水準にあるが、両国間の差は縮小傾向にある。かつて日本経済の「追撃者」と見なされてきた韓国は、経済規模において対等な位置に立つに至ったのである。
しかし、こうした傾向が今後も続くかどうかは不透明である。韓国もまた、急速な少子高齢化の進行により「長期低成長」の入り口に差し掛かっているとの指摘が出ている。韓国銀行(中央銀行)が最近発表した報告書では、「韓国経済が日本と同じ轍を踏んでいる」可能性に警鐘を鳴らしている。
2023年時点の韓国の民間債務の対GDP比率は207.4%に達しており、日本のバブル期における最高値(214.2%)に迫る水準にある。人口構造も日本と似た道を辿っている。日本は急速な少子高齢化によって成長潜在力が低下したが、韓国でも生産年齢人口は2017年、総人口は2020年をピークにすでに減少に転じている。このため、外国人労働力の積極的な受け入れ、サービス産業の高付加価値化、教育・技術分野における人材再配置など、構造改革の緊急性が高まっている。
急速な高齢化など人口構造の変化は、財政健全性の悪化にもつながる可能性が高い。日本の政府債務残高は2023年時点で240.4%と世界最高水準にある。一方、韓国は50.7%と比較的低い水準にあるものの、高齢者人口の増加に伴う社会保障費の拡大と税収減少傾向を考慮すると、中長期的な財政への圧迫は避けられない。さらに、韓国ウォンが国際的な基軸通貨ではないという点も、財政運営上のリスク要因として考慮する必要がある。
韓国銀行の報告書は、「国の栄枯盛衰は運命ではなく選択の結果である」と結んでいる。日本が過去に経験した長期停滞の道のりから教訓を得て、韓国経済が現状の経済水準に比して老朽化した構造を、革新的かつ創造的な破壊を通じて変革することによってはじめて、再び経済回復の道が開かれるだろうと強調している。
参照:聯合ニュース