長寿に不可欠な肝臓の健康、特に病の起点となる脂肪肝の危険性を訴えるのは、新著『肝臓大復活』を執筆した肝臓専門医の栗原毅氏です。同氏が提唱する肝臓を復活させるための新常識から、今回は多くの人が気になるアルコールと肝臓の関係に焦点を当て、肝臓に大きな負担をかける「ヤバイお酒」の見分け方を中心に解説します。
肝臓大復活のために知るべき「ヤバイお酒」の特徴
じつは、すべてのアルコール飲料が肝臓への影響において同じではありません。「肝臓に悪いお酒」と「そうでないお酒」を見分ける重要なポイントの一つは、やはり糖質量です。肝臓にかかる負担を減らすためには、できるだけ糖質の少ないお酒を選ぶことが推奨されます。
なぜお酒に「良い」「悪い」があるのか?
アルコールは製造方法によって醸造酒と蒸留酒に大きく分けられます。ビール、日本酒、ワインといった醸造酒は、製造過程で糖質が残るため、ある程度の糖質を含んでいます。
一方、ウイスキー、ブランデー、焼酎などの蒸留酒は、醸造酒を蒸留してアルコール度数を高める過程で糖質がほぼ除去されるため、基本的に糖質は含まれません。この点だけを見れば、糖質ゼロの蒸留酒の方が肝臓への負担が少ないと言えます。
肝臓の健康を守るため、避けるべきアルコールの種類を図解
知らないと危険!隠れた糖質の罠
ただし、蒸留酒であっても安心はできません。チューハイやカクテルのように、果汁やリキュールで割って飲む場合が多く、中には果糖ブドウ糖液糖などの甘味料が使われていることも少なくありません。蒸留酒そのものが糖質ゼロでも、割り材に含まれる糖質には十分に注意が必要です。
最近よく見かけるアルコール度数が低く、ジュースのように甘くて飲みやすい350㎖缶の「カクテルサワー」も注意が必要です。こうした糖質の多いアルコールを習慣的に毎日飲んでしまうと、それだけで脂肪肝を進行させる原因となりかねません。梅酒や甘酒、そして甘い缶チューハイなど、「甘いアルコールは肝臓に良くない」と認識しておくべきでしょう。
肝臓への最悪リスク!「ストロング系」の危険性
そして、肝臓にとって最も危険なのが「ストロング系缶チューハイ」です。近年、安価で甘く、手軽に酔えることから人気を集めていますが、高アルコール度数(例えば9%)のものを「気軽にグイグイ」と飲む行為は、肝臓に深刻なダメージを与えることを避けられません。
例えば、アルコール度数9%の缶チューハイ500㎖に含まれる純アルコール量は36gにもなります。これは、アルコール度数43%のウイスキーロック(30㎖)約3.5杯分に相当する量です。これを毎日何本も飲むような習慣は、アルコール性肝障害への道をまっしぐらに進むことになりかねません。
さらに悪いことに、ストロング系缶チューハイは、果汁やフルーツフレーバー、果糖ブドウ糖液糖などを添加して飲みやすく加工されていることが多く、アルコール度数の高さと糖質量の多さという両面から、肝臓にとって「避けておくべき最もヤバイお酒」と言えるのです。
このような健康面での懸念が高まるにつれ、大手飲料メーカーの一部では、ストロング系缶チューハイの販売戦略を見直す動きも出始めています。
結論として、お酒は単に酔うためでなく、日々の生活に潤いを与え、健やかに長く楽しむためのものです。その「原点」を忘れず、肝臓の健康に悪影響を与えない範囲で、賢くお酒を選ぶことが、健やかな飲酒ライフの重要な鍵となります。