5日、与謝野馨元財務相が来訪した。「自民党を離党して新党をつくる」と言うので、「『やむにやまれぬ大和魂』というようなものだ。自民党を割って、政界に異変を生じさせ、日本の政治改革の導火線に火を付けようというその志はよろしい」と激励した。
今、日本政治を若返らせ、革新させていくには、「地震」を起こさなくてはならない。
鳩山内閣の支持率は、発足当初の70%台から今は30%割れ寸前のところまできている。民心はおおかた、鳩山内閣から去ったとみてよいだろう。
米軍普天間飛行場移設問題や子ども手当支給、郵政民営化をめぐる問題などをみるにつけ、鳩山政治はやることがあまりにも拙劣であり、本質的な改革を断行して、民衆に受け入れられることをやれなかった。
しかも、自民党時代と変わらないマンネリズムがはびこり、停滞して動きが取れないような状態になっている。民主党の支持率が低下しているのも至極当然のことだといえる。
そうなると、野党の自民党に期待を寄せたいところだが、自民党は谷垣禎一総裁が温厚な人柄だから、鳩山内閣を激しく攻め立てない。政権打倒、政権奪取という気概が感じられない谷垣自民党に国民はもどかしい思いでいる。
与謝野氏らが新党で掲げる「打倒民主党」は、谷垣氏らも思いは同じはずだ。しかし与謝野氏は、こんな薄弱な自民党に不満を募らせ、ここで決起しなければ自民党の立党精神を忘れて無為無策の政治家とみられる、それを潔しとしない、自らが「突撃隊」を編成して体当たりをしよう、「地震」を起こして政治の構造改革をやろうという挙に出たのではないか。
自民党内には、与謝野氏らに限らず、党の現状に不満を持つ議員が相当多いはずだ。平沼赳夫元経済産業相や与謝野氏らの新党結成は、こうした議員への連鎖反応を誘導するだろう。
しかし、参院選を直前にして総裁を谷垣氏から代えることは、かえって自民党全体の薄弱な内面を露呈させることにもなり、参院選にも有為に働かない。
このタイミングでは、谷垣という連隊旗はそのままで、幹事長をはじめとする他の主要幹部を交代することで立て直しができるか。
谷垣氏は、河野太郎君を幹事長代理に登用した。国民受けをねらって抜擢(ばってき)したのだろう。河野君が就任直後から党内の世代交代を訴えるところは、自民党も改革の端緒に就いたという印象を与えたように思わせる。
しかし、幹事長代理に起用しただけでは、政界の刷新や、自民党の思い切った改革には至らない。
若手を主要幹部に登用してもすべてがうまくいくわけでもない。選挙には党の運営や組織にたけた経験や能力が必要だ。地方の信頼もないと任務は全うできない。
国民は新党や既存政党の動きに、新しい国家像や期待を見いだそうとしている。このため、新執行部の体制とともに、参院選のための新政策も至急作るべきだ。
新党に負けないためには、マンネリズムの打破とともに、国民の期待に沿って行動を起こすべく、自民党本体の刷新が急務である。(なかそね やすひろ)
<2010/04/09(金) 東京本紙朝刊 朝1面掲載>