神戸のラーメン店で集団食中毒、原因はカンピロバクター加熱不十分な鶏チャーシューが原因か

兵庫県神戸市にある人気ラーメン店で発生した集団食中毒の原因が、カンピロバクターであることが特定されました。神戸市は、加熱不十分な鶏チャーシューが原因とみており、これを食べた複数の客に下痢や発熱などの症状が出ています。現在、通報者は50人を超え、市は当該店舗に営業停止処分を出しました。この問題を巡っては、SNS上でレアチャーシューを巡る「自己責任」論も展開される中、被害者の一人の声から色覚障害という背景も明らかになっています。

神戸市は6月16日までに、集団食中毒の原因物質がカンピロバクターであると特定したことを発表しました。この食中毒は、神戸市中央区三宮にあるラーメン店「METRO RAMEN」を5月25日から6月2日までに利用した客に症状が出たものです。提供された「鴨出汁ラーメン」と「貝出汁ラーメン」に含まれていた加熱不十分な鶏チャーシューが原因とみられています。

神戸市の発表によれば、当初の通報者は16人でしたが、その後増加し、現在では50人を超える被害が報告されています。市はこの事態を受け、該当店舗に対し3日間の営業停止処分を課しました。JR三ノ宮駅近くに位置するこの店は、グルメサイトで「百名店」に選ばれるほどの人気店でした。

被害に遭った客の一人である30代の会社員男性は、出張で関西を訪れた際にこの店を利用しました。6月4日の昼過ぎに「貝出汁ラーメン」を食べたといいます。彼は「味は正直とても美味しかったです」と振り返り、食事中、チャーシューに特に違和感はなかったと述べています。他の客の多くも名物の鶏チャーシューが乗ったラーメンを食べていた様子だったそうです。

しかし、食事から3日後の6月7日早朝、男性は下痢と腹痛の症状に見舞われました。その日の夕方には38度以上の熱が出て、動くのも困難な状況になったといいます。週末には40度近くまで熱が上がり、ほぼ寝たきりでした。6月8日に病院で処方箋を受け取り熱は下がったものの、下痢と腹痛は続き、1時間に1回トイレに行かなければならない状態がしばらく続きました。症状が回復に向かった後も、他人への感染リスクを考慮し、先週いっぱいは在宅勤務を余儀なくされました。病院ではカンピロバクター食中毒の可能性が高いと診断されましたが、精密検査の結果はまだ出ていません。男性は発症の前後、神戸市の保健所にも連絡し、経緯や症状を共有しました。

今回の集団食中毒では、見た目にも赤みが残る「レアチャーシュー」が提供されていたことから、SNS上では店舗側だけでなく、それを食べた客にも「自己責任ではないか」と指摘する声が少なくありません。しかし、前述の被害男性は、「色覚障害があり色が分からず、まさかレアだとは全く気づかなかった」と語っており、チャーシューが加熱不十分であるとは認識できなかった背景があったことを明かしています。

今回の神戸市の集団食中毒は、人気店であっても食品の加熱処理には十分な注意が必要であることを改めて示す事例となりました。特に鶏肉はカンピロバクターが付着しているリスクが高く、中心部まで十分に加熱することが食中毒予防の基本です。また、被害者の中には色覚障害のような個別の事情を持つ人もおり、食品提供側には見た目だけでなく、加熱状況が明確に分かるような調理や情報提供が求められると言えるでしょう。神戸市は引き続き詳細な調査を進めるものとみられます。

神戸市が発表した、集団食中毒が発生したラーメン店で提供されたラーメンの写真。加熱不十分な鶏チャーシューが見える。