元気な高齢者が実践する意外な習慣:医師が語る水分摂取の真実

元気な高齢者の生活習慣には、時に世間一般で推奨される健康法とは異なる意外な視点が含まれています。長年多くの高齢者を診察してきた経験を持つ二人の医師、一之江駅前ひまわり医院院長の伊藤大介氏と、しろひげ在宅診療所院長の山中光茂氏が、高齢者の健康維持について語り合いました。その中で、特に強調されたのが「水分摂取」に関する注意点です。

高齢者の水分摂取に潜む落とし穴

健康や美容のために「1日に水を2リットル以上飲みましょう」というアドバイスを耳にすることは多いでしょう。確かに、水分不足は代謝の低下や熱中症、脳梗塞などの健康障害の原因となるため、適切な水分補給は重要です。しかし、多くの高齢者と接してきた医師の経験からは、水の摂り過ぎによる健康問題が少なくないという現実が見えてきます。健康意識が高い方ほど、この点に注意が必要です。

高齢者の水分摂取に警鐘を鳴らす在宅医療専門医・山中光茂氏高齢者の水分摂取に警鐘を鳴らす在宅医療専門医・山中光茂氏

医師が現場で見た「水の飲み過ぎ」による症状

山中氏は、特に高齢者において、水の飲み過ぎが心不全や腎不全の症状悪化、さらには誤嚥性肺炎を引き起こすケースが多いと指摘します。水分を過剰に摂取することで、体液バランスが崩れ、既存の疾患を悪化させるリスクがあるのです。

伊藤氏も、夏場に大量の水を摂取した80代の患者さんが、めまいや吐き気を訴え、採血の結果、血液中のナトリウム濃度が大幅に低下している「低ナトリウム血症」になっていた事例を紹介しています。低ナトリウム血症は、重篤化する可能性もある危険な状態です。

高齢者にとって適切な水分量とは?

山中氏によると、息切れや高血圧、足のむくみといった症状がある人は、水の飲み過ぎが心不全の傾向を示している可能性があるといいます。高齢者の場合、体に余計な水分がない状態の方が呼吸が楽になることが多いため、1日に飲む水の量は1リットル程度を目安にするのが良いでしょう。

若い頃は推奨された水分摂取量が、年齢を重ねることで体に負担をかける場合があることを理解することが重要です。体の状態に合わせて、適切な水分量を医療専門家と相談しながら調整することが、高齢者の健康維持には不可欠です。

参考文献