【転換への挑戦】元首相 中曽根康弘 見えない「国のかたち」

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【転換への挑戦】元首相 中曽根康弘 見えない「国のかたち」


 消費税増税法は成立した。では、民主党政権の次の政策課題は何なのか―。野田佳彦首相からの発信はないままだ。

 民主党は、政権交代を訴え、国民の期待とともに先の衆院選に大勝した。しかし、マニフェスト(政権公約)は早々に破綻し、離党者が相次ぎ四苦八苦している。しかしながら、ただ漫然と政権を維持していることが許されるはずはない。

 外交では、今まさに主権護持と領土堅持、つまり独立国家としての政府の毅然(きぜん)たる存在を示すときなのに、曖昧模糊(もこ)となっている。韓国大統領の竹島上陸や天皇陛下をめぐる発言への野田政権の対応はもっと厳然とやるべきであり、尖閣諸島の購入も、世論や石原慎太郎東京都知事の発言に触発されて決めた印象を受けざるを得ない。事が起こってから必死に対応しようとする受け身の姿勢ばかりが目立つ。

 内政でも、場当たり的な問題処理に追われるばかりで、積極的な改革論が影を潜めている。中長期の観点からの確信に満ちた国策や政策を打ち出せていない。自民党的政治の延長でしかない感をぬぐえない。

 しかし、一方で自民党は、いまだにいささか与党ぼけしている。失策続きの民主党政権を倒す野党精神が見えてこない。

 消費税増税法に協力したことは明日の日本を考えれば当を得たことだろう。民主党と組むのか大阪維新の会と組むのか、国民は見ているが、党の主体性が明瞭でない。

 野党であるならば、今こそ民主党政権の政策の欠点を徹底的に洗い出し、次期衆院選の公約策定につなげるべきだ。その上で、野田政権を衆院解散へ追い込み、衆院選では「単独過半数」を目標議席に掲げ、自民党単独政権を目指すのが常道ではないか。今から連立政権を想定して発言するのは本末転倒である。

 衆院の任期が1年を切った。民主党も自民党も、そろそろ「夏休みぼけ」を払拭し、党の柱となる政策を提示するときだ。国民からみると、今の両党は違いの分からない「同類項」的様相であり、国民の不信を一層助長させかねない。

 政策課題は憲法、教育、そして国と地方のあり方を含めた統治機構、外交と山積している。いずれも国家戦略に絡む。一方、原発再稼働の問題はエネルギー問題の将来として考えるべきだろう。「原発廃止」の声は代替エネルギーや料金値上げ、環境という問題に直面するとどうなるか。

 大阪維新の会も、「維新八策」で憲法や教育、統治機構を示した。ただ、維新八策には迫力が感じられない。大阪の視点で考えたからであり、中央にどっしり腰を据えて、八方にらみで出てきた重い「国のかたち」、すなわち国家戦略が見えてこないのだ。憲法・外交が欠けるとこのようになる。

 大阪で燃え上がった改革の炎を国に広げようとしても、橋下徹代表が大阪市長にとどまる限り、炎は大阪で止まる。しかも、市長を務めながら国政も担おうとは、政治のいろはを知らない。

 国を動かしたいのならば、中央に来て雄たけびを上げることだ。全国に檄(げき)を飛ばして国政は始まる。(なかそね やすひろ)

<2012/09/14(金) 東京本紙朝刊 朝1面掲載>

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