トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領は、イスラエルとイランの軍事衝突発生から6日目となる18日、イスラエルによる空爆に直面するイランには「正当な」自衛権があると表明しました。エルドアン氏は、「イランがイスラエルの暴虐と国家テロから自国を守ることは、極めて自然で、正当かつ合法的な権利だ」と述べ、イランの立場を強く支持する姿勢を示しました。
イスラエルとイランの衝突について発言するトルコ大統領レジェプ・タイップ・エルドアン氏
衝突の背景とエルドアン大統領の発言詳細
イスラエルとイランの軍事衝突は、13日未明にイスラエルが大規模な空爆を開始したことに端を発します。これに対しイランは、極超音速ミサイルなどのミサイルや無人機による反撃を行いました。エルドアン大統領はこれらの攻撃に言及し、「これらの攻撃は、イラン核協議が行われているさなかに計画された」と指摘しました。さらに、「核兵器を保有し、いかなる国際ルールも認めないイスラエルは、交渉の終了とその結果を待たずにテロ行為を実行した」と非難し、イスラエルの行動が国際的な枠組みやタイミングを無視したものであるとの認識を示しました。
被害状況とトルコの対応
イラン側によれば、イスラエルによるイラン国内の核施設および軍事施設を標的とした攻撃により、少なくとも224人が死亡したとされています。一方、イスラエル首相府の発表によると、イランによるイスラエルへの攻撃で、少なくとも24人が死亡、数百人が負傷したとのことです。エルドアン大統領は、この緊迫した状況に対し、「われわれはイスラエルによるイランへのテロ攻撃を注視している。わが国のすべての機関は、これらの攻撃がトルコに及ぼし得る影響について、厳戒態勢を取っている」と述べ、トルコの安全保障に対する警戒を強調しました。
トルコの立場とイスラエルからの反論
トルコは、地域における安定の維持を重視する姿勢を示しており、エルドアン大統領は「われわれはあらゆるシナリオに備えている」「われわれを試そうとするべきではない。わが国はこの地域(中東)において、他国の領土を奪う意図は全くない」と付け加え、他国への不干渉と自国の防衛への決意を表明しました。
これに対し、イスラエルのギドン・サール外相は、エルドアン大統領の発言を厳しく批判しました。サール氏は、トルコ軍がシリア北部や、南北に分裂したキプロス島の北部(トルコが実効支配)に駐留している現状を指摘し、自身のX(旧ツイッター)に「帝国主義的な野心を隠さずシリア北部に侵攻し、キプロス北部を不法占拠している人物が、道徳と国際法の名の下に発言するとは、皮肉にもほどがある」と投稿しました。「もう少し分をわきまえるといいだろう」とも付け加え、エルドアン氏の主張に正当性がないと反論しました。
結論
エルドアン大統領のイランの自衛権擁護発言は、中東情勢の複雑さを改めて浮き彫りにしました。イスラエルとイランの直接衝突が続く中、トルコのような地域大国のスタンス表明は、今後の国際社会の対応や事態の推移に影響を与える可能性があります。エルドアン氏のイスラエル非難に対し、イスラエル側が強く反論するなど、各国の外交的な駆け引きが続いています。この一連の動きは、中東地域の安定にとって重要な局面を迎えていることを示唆しています。