日本郵便、点呼記録改ざん問題で謝罪 国交省処分受け入れ

日本郵便は17日、配達員の法定点呼が適切に行われていなかった問題で、点呼記録簿に10万件を超える改ざん(不実記載)があったと発表し、謝罪しました。この問題を受け、国土交通省からトラックやバン2500台の貨物運送事業許可を取り消す行政処分を受け入れる方針を表明しました。

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法定点呼の不適切実施と記録改ざんの詳細

発表によると、不適切な点呼は点呼総数の18%に当たる10万2千件に上り、記録簿の改ざんが確認されました。これは、配達員の酒気帯び確認といった安全運行に関わる重要な法定業務を怠っていたことを意味します。国土交通省は、貨物運送事業法に基づき、問題発覚後の監査を経て、2500台の車両に対する輸送事業許可の取り消しを決定しました。この処分が確定すれば、対象車両の再取得は今後5年間できなくなります。処分は月内にも正式決定される見込みです。

貨物輸送力低下への対応策

今回の処分により、日本郵便は約2500台分の輸送力を失うことになります。これは処分対象車両が持つ輸送力の約3割に相当します。この輸送力不足を補うため、日本郵便は代替措置を講じます。具体的には、失われる輸送力の約3割をヤマト運輸、佐川急便、西濃運輸といった外部の運送業者に委託するための交渉を進めています。さらに約2割は日本郵便の子会社が担い、残りは自社の軽バンなどを活用して賄う計画です。日本郵便の千田哲也社長は東京都内での記者会見で、「国民生活に影響が出ないよう最大限努める」と強調し、安定輸送への決意を示しました。

点呼記録改ざん問題で記者会見に臨む日本郵便の千田哲也社長点呼記録改ざん問題で記者会見に臨む日本郵便の千田哲也社長

物流網への懸念と経営陣の責任

今回の行政処分とそれに伴う輸送力低下は、今後の国内物流網全体にしわ寄せが及ぶ懸念があります。特に、参議院選挙の郵便物増加や夏のお中元シーズンといった繁忙期を控えており、影響が顕在化する可能性が指摘されています。日本郵便は、点呼業務の実態把握が不十分であったことなどの経営責任を明確にするため、社内処分を発表しました。千田社長は月額報酬の40%を3カ月間減額されるほか、役員計11人が処分対象となりました。また、問題発生当時の支社長で、現在は日本郵政グループの企業に在籍する2人も報酬を自主返納するとのことです。

点呼記録改ざん問題について謝罪する日本郵便の千田哲也社長点呼記録改ざん問題について謝罪する日本郵便の千田哲也社長

まとめ

日本郵便は、法定点呼の不適切実施と記録改ざんという重大な問題に対し、国土交通省からの厳しい行政処分を受け入れました。輸送力の低下を補うため、外部委託やグループ内連携などの代替措置を講じるとともに、経営責任を明確にするための社内処分も実施します。今後の繁忙期に向けて、国内物流網への影響が注視されます。