イスラエルがイランに対して攻撃を実施した背景には、核開発に関する「決定的な情報報告」があったと報じられています。エコノミスト誌は18日(現地時間)、イスラエル情報当局が「イランが核兵器開発において『不可逆的な地点』に到達したという機密情報を入手した」と主張したことに触れ、この情報がイスラエルの攻撃を誘発した決定的な契機になったと伝えました。この報告は、イランの核活動に関する従来の評価を覆す内容を含んでいました。
新たな「決定的情報」の詳細
まず、イスラエル側が得た情報の一つは、イランの科学者が濃縮状態が不明な大量の核物質を隠匿しているというものでした。これは、国際原子力機関(IAEA)による最新の評価には含まれていない内容です。IAEAはこれに先立つ9日、イランが兵器級に近いとされる60%に濃縮されたウランを400キログラム以上保有していると評価していました。この量は過去3カ月で50%も増加しており、BBCはこれを「追加精製により核兵器10個を製造可能な量」と指摘しています。イスラエルが収集した新たな情報によると、この公表された量以外にも核物質が存在する可能性が示唆されています。
次に、弾道ミサイル戦力を管轄するイランのイスラム革命防衛隊(IRGC)空軍と核科学者らの間で開催が迫っている会議に関する諜報でした。エコノミスト誌はこの情報を、「核弾頭とミサイルの『結合』が間近に迫っていることを示唆するものだった」と報じています。イスラエル当局は、このような会議の開催を「(超えてはならない)ルビコン川」のように極めて重要視していました。
さらに、イスラエル側はすでに、イランの核科学者らが6年前に秘密裏に「特別進展グループ」を結成していた事実を把握していました。このグループは、イランの秘密核爆弾製造計画「AMAD」(2003年に解体)を主導したモフセン・ファフリザーデ氏(2020年暗殺)の後援で設立されたものです。「イラン核兵器の父」とも呼ばれたファフリザーデ氏の後継者とされる核科学者たちは、イランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師が爆弾開発の加速を決定した場合に備え、すでにその準備を推進していたとみられています。新たな情報は、こうした準備が最終段階に近づいている可能性を示唆したと考えられます。
2025年6月18日に公開された、イスラエルに向けてミサイルを発射するイラン革命防衛隊の部隊
米国政権への影響とトランプ大統領の見解
エコノミスト誌は、イスラエルが入手したこれらの新たな機密情報が、トランプ米大統領に大きな影響を与えたと分析しています。米国の情報機関がイスラエルの主張に懐疑的な姿勢を示していたのに対し、トランプ大統領はむしろイスラエル側の情報を信用し、自国の情報機関の判断に不信感を表明したと伝えられています。
例えば、イランとの軍事衝突に反対の立場を取ってきたトゥルシー・ギャバード米国家情報長官は3月、議会証言で「情報当局はイランが核弾頭を開発中とは判断していない」と述べていました。しかし、トランプ大統領は17日、イランの核兵器保有可能性に関する記者からの質問に対し、「非常に高い」と答弁しました。ギャバード長官の過去の証言に言及されると、トランプ大統領は「ギャバードが何を言おうと関係ない。私は彼らがほぼ(核兵器を)完成していたと考える」と述べ、米情報機関の見解を一蹴する形となりました。
イスラエルとイラン間の心理戦・情報戦
こうした緊迫した状況下で、イスラエル軍はイラン住民に向けてモサドへの接触を促すメッセージを発信するなど、心理戦を強化しています。18日、イスラエル軍はSNSを通じて、「イラン政権が作り出した困難な状況を考慮すると、イランの皆さんが直面している苦境はよく理解できる」とし、「政権の治安機関所属と自認する人たちさえ、イランで起きていることに恐怖や絶望、怒りを表明し、『イランがレバノンやガザ地区のような運命をたどらないでほしい』と要請している」と主張しました。さらに、モサドの公式ウェブサイトのアドレスを紹介し、「注意して外部VPN(仮想プライベートネットワーク)を通じて連絡してほしい」と呼びかけました。
一方、イラン側はモサドに通じたスパイ摘発に血眼になっています。この日、イラン半国営メフル通信は、5人のモサド系スパイ容疑者がIRGCに逮捕されたと報じました。ワシントンポスト紙は、イスラエルが13日にイランを電撃空爆して核施設を攻撃し、主要な核科学者を標的殺害した一連の作戦において、モサドによる緻密な準備が寄与したと伝えており、情報戦の激化が浮き彫りとなっています。
これらの新たな機密情報は、イランの核開発が予想以上に進展し、核兵器化への現実的な脅威が迫っている可能性を示唆するものでした。イスラエルが入手したとする一連の情報、特に核物質の隠匿や核弾頭とミサイルの結合に向けた会議の動きなどが、「不可逆的な地点」への到達を示唆するものとして捉えられ、今回のイスラエルによる攻撃の主要な引き金となったと分析されています。
参考文献:
- ロイター通信
- 聯合ニュース
- エコノミスト誌
- BBC
- ワシントンポスト
- オリジナル記事(Yahooニュース)