厚生労働省が2025年7月25日に公表した「令和6年簡易生命表の概況」は、日本の最新平均寿命が男性81.09年、女性87.13年であることを示しました。この数字は、私たちが「人生100年時代」という長寿社会を生きる現実を改めて浮き彫りにしています。しかし、平均寿命の伸長は喜ばしい一方で、老後の生活資金に対する漠然とした不安を抱える方も少なくありません。特に年金生活が本格化する70歳代においては、これまで築き上げてきた資産をどのように管理し、取り崩していくかが喫緊の課題となります。この記事では、公的データに基づいた日本の平均寿命の推移と現状を詳しく解説し、長寿社会を豊かに生き抜くために現役世代が今から取り組むべき老後資金対策について考察します。
平均寿命が長い日本:最新データとその推移
厚生労働省が2025年7月25日に公表した「令和6年簡易生命表の概況」によると、最新の平均寿命は男性が81.09年、女性が87.13年でした。ここでいう「平均寿命」とは、0歳の平均余命を指します。男性の平均寿命は前年と横ばい(±0.00年)で、女性はわずかに下回ったものの(▲0.01年)、長期的には伸長傾向にあります。男女差は6.03年で、前年よりわずかながら縮小しました。
日本の平均寿命は、戦後の混乱期を経て大きく延伸してきました。以下に過去の推移をまとめます。
- 昭和22年: 男性50.06年、女性53.96年(男女差3.90年)
- 昭和25-27年: 男性59.57年、女性62.97年(男女差3.40年)
- 昭和30年: 男性63.60年、女性67.75年(男女差4.15年)
- 昭和35年: 男性65.32年、女性70.19年(男女差4.87年)
- 昭和40年: 男性67.74年、女性72.92年(男女差5.18年)
- 昭和45年: 男性69.31年、女性74.66年(男女差5.35年)
- 昭和50年: 男性71.73年、女性76.89年(男女差5.16年)
- 昭和55年: 男性73.35年、女性78.76年(男女差5.41年)
- 昭和60年: 男性74.78年、女性80.48年(男女差5.70年)
- 平成2年: 男性75.92年、女性81.90年(男女差5.98年)
- 平成7年: 男性76.38年、女性82.85年(男女差6.47年)
- 平成12年: 男性77.72年、女性84.60年(男女差6.88年)
- 平成17年: 男性78.56年、女性85.52年(男女差6.96年)
- 平成22年: 男性79.55年、女性86.30年(男女差6.75年)
- 平成27年: 男性80.75年、女性86.99年(男女差6.24年)
- 令和2年: 男性81.56年、女性87.71年(男女差6.15年)
- 令和3年: 男性81.47年、女性87.57年(男女差6.10年)
- 令和4年: 男性81.05年、女性87.09年(男女差6.03年)
- 令和5年: 男性81.09年、女性87.14年(男女差6.05年)
- 令和6年: 男性81.09年、女性87.13年(男女差6.03年)
直近の数年は横ばいの傾向が見られますが、長期的な視点で見ると男女ともに平均寿命が大きく延びていることが明らかです。このデータは、「人生100年時代」が単なる標語ではなく、私たちにとって現実味を帯びた未来であることを強く示唆しています。長生きできることは喜ばしい限りですが、老後期間が長くなるということは、その分、生活資金の準備がより一層重要になることを意味します。豊かな老後を過ごすためには、現役時代からの計画的な貯蓄や資産形成が不可欠です。
長寿社会における「健康寿命」と老後資金の現実
長寿社会における老後の資産形成を考える高齢者の手元イメージ
長寿社会を語る上で、平均寿命と並んで重要なのが「健康寿命」です。健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」を指し、2022年時点のデータでは男性72.57歳、女性75.45歳となっています。
平均寿命と健康寿命の間には、男女ともに約8~12年のギャップが存在します。これは、健康上の問題で日常生活に制限が生じる期間が、平均でこれだけあることを意味します。老後の収入補填として「働き続ける」ことを想定している方もいるかもしれませんが、健康寿命を超えても同じように働ける保証はありません。
多くの人が、多かれ少なかれ、いつかは「貯蓄を取り崩しながら年金生活を送る」フェーズに入っていくことになります。この現実を踏まえれば、現役時代からの計画的な貯蓄や年金制度への深い理解が欠かせません。では、今の70歳代の世帯は、具体的にどれくらいの貯蓄を持っているのでしょうか。この問いは、多くの人が自身の老後資金計画を考える上で非常に重要な指標となるでしょう。漠然とした不安を具体的な数字で捉え、未来の自分を支えるための第一歩とすることが大切です。
結論:長寿時代を生き抜くための老後資金対策
日本の平均寿命が延伸し、人生100年時代が現実となる中で、老後資金の準備は現役世代にとって避けて通れない課題です。平均寿命と健康寿命の間に存在するギャップは、健康上の制約がある期間の生活資金をいかに確保するかの重要性を浮き彫りにしています。
年金制度だけではカバーしきれない可能性のある老後生活に備えるためには、計画的な貯蓄に加え、NISAやつみたてNISAなどの税制優遇制度を活用した資産形成が効果的な選択肢となります。また、自身のライフプランに合わせた退職金制度の理解や、不動産、保険など、多様な金融商品の知識を深めることも重要です。未来の自分が安心して暮らせるよう、今のうちから具体的な目標を設定し、着実に準備を進めていくことが、長寿社会を豊かに生き抜くための鍵となるでしょう。
参考文献
- 厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」(2025年7月25日公表)
- 厚生労働省「健康寿命について」(2022年時点データ)