一般的な「住みたい街ランキング」には登場しないものの、住み心地の良さから注目すべき街を巡る本シリーズ。今回は神奈川県横浜市港北区に位置する日吉を訪れた。この街の住民からは、「下の住民には昔からの地主さんが多く、街としてのまとまりがあるが、上の住民は後から来た人が多く、街への愛着が薄い」という興味深い声が聞かれた。「上と下」とは一体何を指すのだろうか。日吉の街が持つ知られざる魅力と課題に迫る。
日吉の地形と「上と下」の区分
この日吉駅(横浜市港北区日吉2-1-1)付近の住民が語った「上と下」という言葉は、この街の地理的な特徴に由来する。彼によると、「上」は日吉駅周辺を、「下」は横浜市営地下鉄グリーンラインの日吉本町駅付近を指すという。日吉は丘陵地に位置しており、日吉駅が丘の上にあるのに対し、日吉本町駅付近は丘の下にあるのだ。慶応大学の広大なキャンパスが日吉駅の近くに位置していることも、この街の大きな特徴の一つである。
赤門坂を下り、日吉本町駅へ
実際に地図で確認すると、住民の語る通り、日吉には顕著な高低差が存在することがわかる。日吉駅付近から「普通部通り」をまっすぐ進むと、地元で「赤門坂」と呼ばれる急な坂道が現れる。この坂の名前は、坂の途中にある旧家の大きな赤い門にちなんでいるという。赤門坂を下りきると、日吉本町駅(横浜市港北区日吉本町5-3-1)にたどり着く。日吉駅から日吉本町駅までは直線距離で約1.2キロメートルだが、その道のりは高低差を実感させるものだ。
駅周辺と坂下の対照的な雰囲気
日吉駅周辺は、駅を中心に放射状に伸びる4つの活気ある商店街があり、常に多くの人々で賑わっている。大学が近いこともあり、学生の姿も多く見られる。一方、赤門坂を下りきった先にある日吉本町駅周辺は、日吉駅前のにぎわいとは対照的に、ぐっと落ち着いた閑静な住宅地の雰囲気が漂っている。同じ「日吉」という名を冠しながらも、駅からの距離と高低差によってこれほどまでに街の様相が異なるのは興味深い。
横浜市日吉駅前にある4つの商店街付近を歩く筆者の様子。
「上の住民」の街への愛着は薄いのか?
冒頭の住民の言葉、「下の住民は地主が多く街にまとまりがあるが、上の住民は後から来た人が多く愛着が薄い」という話は、この街の二面性を象徴しているかのようだ。歴史的にその地に根ざしてきた住民と、後から流入してきた住民との間には、街に対する意識や関わりに違いがあるのかもしれない。賑やかな駅前と静かな坂下、そしてそれぞれの地域に住む人々の間に存在するかもしれない意識の差。この日吉という街の奥深さをさらに探るため、現地の事情に詳しい人物への取材を進める必要があるだろう。
まとめ
神奈川県横浜市港北区に位置する日吉は、慶応大学があり、駅前商店街が賑わう一方で、坂を下った先には閑静な住宅地が広がる多様な顔を持つ街である。特に顕著な高低差が、駅周辺の「上」と日吉本町駅付近の「下」という区分を生み出し、それぞれの地域に住む住民の間に街への愛着度合いの違いがあるという示唆に富む声も聞かれた。この街の住み心地や魅力、そして住民意識の実態をさらに深く理解するためには、さらなる調査が必要だ。