米国防総省、日本を含む同盟国にGDP比5%の防衛費要求:従来のハードルを大幅に引き上げ

米国の国防総省は21日、日本を含むアジアの同盟国に対し、国内総生産(GDP)比で5%を防衛費に充てるべきだとの見解を明確にしました。これは、トランプ前政権が掲げた同盟国の「応分の負担」要求をさらに強化するもので、欧州の北大西洋条約機構(NATO)で議論されている防衛費水準をアジアにも適用する方針を示した形です。

米国の国旗。国防総省の防衛費増額要求に関するニュースの背景を示す。米国の国旗。国防総省の防衛費増額要求に関するニュースの背景を示す。

国防総省のサブリナ・シン・パーネル報道官は声明で、NATOが24、25日の首脳会議で合意を目指すGDP比5%の防衛費引き上げが、米国の同盟国にとって新たな「世界基準」になると強調しました。その理由として、中国の大幅な軍拡や北朝鮮の核・ミサイル開発を挙げ、「アジア太平洋の同盟諸国が欧州の防衛費のペースと水準に急いで追いつくために動くことこそが常識だ」と主張。このよりバランスの取れた公平な負担は、米国民の利益にも資すると説明しました。

日本政府の防衛費は、2025年度予算で関連経費を含めてGDP比約1.8%となる見込みです。2027年度には2%への増額を目指していますが、2028年度以降の次期防衛力整備計画の策定に向け、米国から更なる増額圧力がかかることは避けられません。

これまでの米国からの防衛費増額要求としては、今年3月にコルビー国防次官(政策担当)が米議会公聴会で日本に対しGDP比3%を主張し、5月にはヘグセス国防長官がオーストラリアにGDP比3.5%への早期増額を求めていました。

しかし、今回示されたGDP比5%は、従来の要求水準を大幅に上回るものであり、国際的に見ても極めて異例な高水準です。米国自身の2024年の防衛費も、NATOの推定によればGDP比3.19%にとどまっています。NATO自体も、防衛費の目標を3.5%としつつ、インフラ整備費など関連経費を積み上げることで「5%」達成を目指す方向です。

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)のデータによると、アジアにおける米国の主要同盟国も、2024年の防衛費のGDP比は、韓国が2.56%、オーストラリアが1.88%、フィリピンが1.32%、タイが1.08%にとどまっており、いずれも5%には遠く及ばないのが現状です。トランプ政権は、高い目標として「5%」を掲げつつ、各国との交渉を通じて現実的な着地点を探ると予想されます。

一方で、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は20日、トランプ政権が日本に対し防衛費をGDP比3.5%に増額するよう要求したと報じています。

これに対し、日本政府は「防衛費は、米国に限らず他国に言われて決めるものではない」という姿勢を強調しています。防衛省関係者も、今後の日米間での具体的な%に関する議論は避けられないとの見方を示しつつも、「日本も努力すべきだという議論にはなるだろうが、議論を詰めるには時間がかかる」と指摘しており、5%という高い目標に対する日本側の対応は容易ではない見通しです。

【参考資料】

  • 米国防総省発表
  • ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)報告
  • フィナンシャル・タイムズ報道
  • 日本政府、防衛省関係者発言