2025年も、数多くの珠玉のドラマが私たち視聴者を魅了しました。年間100本以上のドラマを丹念にチェックする専門家として、筆者が独断で選出した「今年特に素晴らしかった地上波ドラマ10選」の中から、今回は5位と4位の作品をご紹介します。これらの作品は、単なるエンターテイメントを超え、深い洞察と感動を提供し、社会的な話題性も兼ね備えています。
5位：視聴者の想像力を裏切る独創的な会話劇『ホットスポット』
日本テレビ系で放送された『ホットスポット』は、リピート視聴したくなるほどの満足度を誇る一本でした。市川実日子演じる清美の同僚、高橋さん（角田晃広）がまさかの“宇宙人”であるという斜め上を行く設定にもかかわらず、そのルールが異様に細かく設定されている点が、バカリズム脚本ならではの妙味です。宇宙人の能力は人間の潜在能力を底上げするに過ぎず、使用すれば副作用が生じ、回復には勤めるホテルの温泉が必要という制約。さらには「頭脳系能力を使うとハゲる」といった、笑いを誘いつつも妙に納得させられる設定が、視聴者の想像力を心地よく裏切り続けます。
このドラマのもう一つの圧巻は、その脱力系の会話劇にあります。清美、はっち（鈴木杏）、みなぷー（平岩紙）、高橋さんの“ただの駄弁り”が延々と続くにもかかわらず、一切飽きさせません。会話の8割が他愛もない内容であるにも関わらず、伏線回収が非常に緻密であることに驚かされます。「記憶力が落ちている」といった些細な一言でさえも、後の展開に繋がる伏線として丁寧に拾われ、日常の中にキャラクターが立体的に構築されていく様はまさに中毒的です。建前と本音の対比もリアルで、「職場にいそう」な普通の人々が、超能力者や未来人を巻き込みながらも、最終的には富士浅田市の未来、すなわち大切な日常を守るために一致団結する展開は見事でした。
2025年を彩った話題のドラマ作品
4位：不器用ながらも誠実に心に響く学園ドラマ『僕達はまだその星の校則を知らない』
学園ドラマのジャンルにおいて、フジテレビ系・カンテレ制作の『僕達はまだその星の校則を知らない』（通称・ぼくほし）は、特に強く心に残る作品となりました。独特な感性を持つがゆえに学校生活に馴染めないスクールロイヤー・健治（磯村勇斗）が、教師の珠々（堀田真由）と共に、生徒たちが抱える問題に不器用ながらも真摯に向き合っていく姿を描いています。このドラマが多くの視聴者の心に刺さった理由は、主人公が法律を駆使して問題を「ズバッと解決する」いわゆる“必殺仕事人”型ではない点にあります。
どんなに真剣に向き合っても、完璧な答えが常に用意されているわけではなく、問題が綺麗さっぱり解決するわけでもない。そうした現実の厳しさと、それでも誰かが少しでも寄り添ってくれることの希望の両方を、このドラマは誠実に描き出しました。何よりも、全話を通して健治が少しずつ変化していく姿は、多くの視聴者の胸を打ちました。自身の個性を大切にしながら、他者と繋がり、その喜びを見出していく過程が丁寧に描かれており、回を追うごとに健治の背中が頼もしくなっていくのが印象的でした。磯村勇斗さんの確かな演技力はもちろんのこと、生徒役の若手俳優たちが表現する苦悩や葛藤もまた、幾度となく心を揺さぶるものでした。見応えのある骨太な学園ドラマとして、2025年を代表する一作と言えるでしょう。
次回予告：トップ3の発表
今回は2025年の注目ドラマから5位と4位の作品をご紹介しました。『ホットスポット』のユニークな脚本と会話劇、『僕達はまだその星の校則を知らない』の現実を直視しつつ希望を描く姿勢は、どちらも今年のドラマ界に大きな足跡を残しました。次回は、さらに上位にランクインしたトップ3の作品を深掘りし、その魅力を余すところなくお伝えする予定です。
