米国政府がイランの核関連施設を攻撃したとの報道で、「バンカーバスター」と呼ばれる特殊な爆弾が使用された可能性が浮上し、注目を集めています。このバンカーバスターとは一体どのような兵器なのか、その驚異的な能力と、なぜ今回標的となったイランの地下施設に有効とされるのかについて詳しく解説します。
バンカーバスターとは
バンカーバスター(Bunker Buster)は、地中深くの頑丈な施設や地下構造物を破壊するために特別に設計された爆弾です。一般的な爆弾が地表で爆発するのに対し、バンカーバスターは高速で地面やコンクリート、鉄筋構造物を貫通してから地下へ深く潜り込み、目標の内部または直近で爆発することで、効果的に破壊します。
イランの地下核施設への使用可能性
イランの核施設、特にフォルドゥにある施設は、山の内部の地下深くに建設されているとされています。このような地下に堅固に構築された施設は、通常の航空爆弾では破壊することが非常に困難です。そのため、地中深くへ到達し破壊できるバンカーバスターのような兵器が有効な選択肢となり得ます。
最新型「GBU-57」の能力
最新型のバンカーバスターとして知られるのが「GBU-57」です。この爆弾は極めて大型で重く、高性能な誘導システムを備えています。コンクリートや鉄筋を貫通する能力に優れており、公式な推定では約61メートル(200フィート)の深度にある地下施設でも破壊可能とされています。
その驚異的なサイズと重量
GBU-57のサイズは圧倒的です。全長は約6メートルにも達し、その重量は約1万3600キログラム、すなわち13.6トンにもなります。これは一般的な乗用車およそ10台分の重さに匹敵し、その破壊力と貫通能力の大きさを物語っています。
搭載可能な航空機
これほど巨大なGBU-57を搭載して運用できる航空機は限られています。現在、この爆弾を主任務で運用するのは、アメリカ空軍のB-2ステルス爆撃機のみです。B-2はレーダーに探知されにくいステルス性能を持ち、秘匿性の高い長距離攻撃ミッションに用いられます。
バンカーバスター搭載任務に使用される米空軍のB-2ステルス爆撃機
バンカーバスター開発の経緯
バンカーバスターのような地中貫通爆弾が本格的に開発されるようになったのは、1991年の湾岸戦争がきっかけです。この戦争でイラクが地下深くに構築した司令部や軍事施設を破壊することの困難さが明らかになり、アメリカ軍は緊急で効果的な地中貫通兵器の開発を進めました。
他国におけるバンカーバスター
バンカーバスターの開発・運用はアメリカだけにとどまりません。ロシアも独自の地中貫通爆弾を保有しています。ロシア製のバンカーバスターは、シリア内戦における武装勢力の地下拠点攻撃や、ウクライナ侵攻における堅固な防御陣地への攻撃などで使用された事例が報告されています。
潜在的な危険性と国際的な懸念
バンカーバスターは、その破壊力ゆえに大きな人的・物的被害をもたらす可能性が高い兵器です。そのため、その使用は国際社会から常に強い関心と懸念を持って見守られています。各国は、こうした強力な兵器の使用判断について、極めて慎重に行う姿勢が求められます。
バンカーバスターは、通常の兵器では破壊が困難な地下深くの堅固な目標を攻撃するために開発された特殊な兵器です。特に最新型のGBU-57はその貫通能力と破壊力において群を抜いており、地政学的な緊張が高まる中でその存在と使用可能性は引き続き世界の注目を集めています。
【参照元】Yahoo!ニュース