那覇の愛されカフェ「ミンサーカフェ」5年間の軌跡:常連客が残した心温まるラムネとメッセージ

沖縄県那覇市で5年間にわたり営業し、多くの人々に愛されてきた「Minsa Cafe(ミンサーカフェ)」が、2024年7月13日にその歴史に幕を下ろしました。閉店を惜しむ声が寄せられる中、オーナーの青山朋佳さん(29)は、ある常連客からの心温まる別れの贈り物に深く感動しました。これは、単なるカフェの閉店以上の、人と人との繋がりと、新たな挑戦への希望の物語です。

「いつの世も」客に寄り添った空間:常連客との心温まる交流

コロナ禍真っ只中の2020年に那覇市にオープンした「ミンサーカフェ」は、「いつの世も、居心地の良い空間を、いつまでも」というコンセプトを掲げ、長時間の滞在を歓迎する独自のスタイルを築いていました。オーナーの青山朋佳さんは、「この空間で落ち着いて過ごしていただける、それが何より」と語り、利用客一人ひとりに寄り添う温かいサービスを提供してきました。

閉店が発表されてからは、別れを惜しむ多くの人々が連日来店し、店内は賑わいを見せていました。2024年6月8日も多忙な一日でしたが、閉店作業を終え、青山さんが片付けに取りかかった際、月に数回訪れていた若い女性常連客のカウンター席に、忘れ物のように置かれたものがありました。それは、個包装のラムネ2粒。その下には、「コーヒーごちそうさまでした。毎度、長時間居てしまいすいません。高校生のころから通っていたカフェなので少しさみしいですが、次のステージも応援しています。ご無理をせず、体調にもお気をつけて。」と書かれた付箋が添えられていました。言葉を交わすことはほとんどなかった客からの、心温まるメッセージに青山さんは胸を熱くしました。

ミンサーカフェの店長兼オーナーを務める青山朋佳さん。彼女のカフェ経営への情熱と挑戦の軌跡を象徴する一枚。ミンサーカフェの店長兼オーナーを務める青山朋佳さん。彼女のカフェ経営への情熱と挑戦の軌跡を象徴する一枚。

コロナ禍での挑戦:逆境を乗り越えた「肉巻きおにぎり」の誕生

岡山県で育った青山さんは、高校卒業と同時に「家を出る」と決意し、調理師免許を取得できる高校を卒業後、思い出の地である沖縄のリゾートホテルに就職しました。21歳の時、カフェレストランへと転職。その後、那覇市内の食堂で偶然出会った男性との縁からビジネスを学び、25歳で「ミンサーカフェ」を開業しました。

しかし、開業はまさにコロナ禍の真っただ中。当初は集客に苦戦を強いられました。開業から約1年後、ビジネスパートナーだった男性が急逝するという悲劇に見舞われ、青山さんは店長兼オーナーとして一人で店を引き継ぐことになります。この困難な時期に、後のカフェを支えることになる「肉巻きおにぎり」が誕生しました。試行錯誤の末にメニューに加わったこの商品は、瞬く間に看板商品となり、客のほとんどが注文するほどの人気を博しました。中の半熟卵を改良するなどして販路を拡大し、「肉巻きむすめ」として商標登録も行うに至りました。

新たなステージへ:感謝と共に未来を見据える

「ミンサーカフェ」の閉店は、およそ1年前から検討されていました。店舗の賃貸契約の更新時期を迎え、青山さんは「肉巻きむすめ」をメインとした新たな業態に挑戦したいという強い思いを抱いていました。今後は、より広い厨房を備えた場所を探し、新店舗をオープンさせる計画です。

5年間を振り返り、青山さんは「楽しかったことばかりがパッと思い浮かぶ」と語ります。多くの苦労も経験しましたが、お客様一人ひとりの支えがあったからこそ、最高の状態でカフェを終えることができたと感じています。付箋にメッセージを残してくれた常連客も、その大切な一人でした。青山さんは、「温かいメッセージをありがとうございました。次にお会いする時はちゃんとお礼を言わせてください。もっと素敵な空間を作ってお待ちしていますから」と、感謝の気持ちと未来への展望を語りました。いつか、再びカフェをオープンさせたいという夢も抱きながら、青山さんの新たな挑戦は、これからも続いていきます。

参考文献