現代において、「運動を禁じる病気」はほとんどなくなり、持病があっても「歩く」ことが広く推奨されています。高齢者にとっても重要なウォーキングが、健康長寿にどう貢献するのか、そして効果を最大化するための最適な時間帯や、注意すべき時間帯について、専門家の知見に基づき詳しくご紹介します。
ほとんどの病気でウォーキングが推奨される時代へ
持病を理由に運動を避ける人がいますが、現在では歩くことが推奨されない病気はごくわずかです。かつては運動が禁忌とされた人工透析患者や心臓病患者も、今では適度な運動、特にウォーキングが推奨されています。手術後の入院期間中も、早期離床が一般的となり、筋力低下や寝たきりの予防のために歩行が促されます。これは、数日の安静でも筋力が著しく低下することがわかっているためです。ペースメーカー装着者も歩いた方が良いとされています。
ウォーキングの即時的・短期的な効果
ウォーキングによる健康効果は、意外にも早く現れます。運動開始の翌日には末梢血管の拡張により全身の血流が改善し、心臓の負担が軽減されて心拍数が低下します。さらに1週間続けると毛細血管の機能が高まります。高血圧症、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病の数値は、2週間から1カ月で改善が見られることもあります。これらの病気に対しては、薬物療法を開始する前に運動療法が推奨されるほど、ウォーキングは有効な手段です。
健康長寿を目指し屋外でウォーキングする高齢者たち
睡眠の質を高める「夕方ウォーキング」
ウォーキングを行う時間帯も、得られる効果に影響します。特に睡眠の質を高めたい方には、夕方(4000〜6000歩程度をまとめて)のウォーキングが推奨されます。これは、就寝前に体温を上げることで、その後の体温下降がスムーズになり眠りに入りやすくなるためです。群馬県中之条町の高齢者を対象とした調査(中之条研究)でも、加齢とともに体温が上がりにくくなり、睡眠効率が低下する傾向が示されています。夕方の入浴と同様に、ウォーキングで血流を良くし体温を上げておくことが、安眠につながります。また、適度な疲労感も睡眠導入を助けます。足首から太ももをさする、室温を適切に保つなども、睡眠の質向上に有効です。
血糖値安定に役立つ時間帯と避けるべき時間帯
血糖値の安定を目指す場合は、食後にウォーキングを行うと効果的です。一方で、時間帯によっては避けるべきウォーキングもあります。それは、朝起きてすぐ、特に起床後30分以内です。この時間帯の運動は体に負担をかける可能性があるため、避けるように専門家は推奨しています。
現代医療において、ウォーキングは多くの病気を持つ人々にも積極的に推奨される健康増進法です。心拍数や血流の改善、生活習慣病の数値改善など、その効果は即時的および短期的に現れます。特に夕方のウォーキングは睡眠の質向上に、食後のウォーキングは血糖値安定に有効です。一方で、起床直後のウォーキングは避けるべき時間帯とされています。自身の体調や目的に合わせ、適切な時間帯にウォーキングを取り入れることが、健康長寿への鍵となります。