岩手県北上市で温泉旅館従業員を襲い駆除されたツキノワグマの事件は、社会に衝撃を与えました。近年、ツキノワグマによる人身被害が急増し、その異常な凶暴性が問題視されています。日本ツキノワグマ研究所の米田一彦所長が、今回の事件と過去の襲撃との関連性、及びクマの行動変化の背景に迫ります。
ツキノワグマの人身被害が頻発する中、その異常な行動に社会の懸念が高まっている。
前例なき攻撃性:異常な遺体損傷と民家侵入
米田所長は、10月18日に駆除されたクマの凶暴性を「例がない」と指摘します。温泉旅館で男性従業員の遺体は激しく損傷し約50m引きずられ、同一個体とされる10月8日の事件では遺体の頭部と胴体が離れたとされます。これらは約130年で前例がなく、人間の骨格の丈夫さから極めて異例な事態です。また、7月4日に北上市の民家に侵入し高齢女性を殺害したケースも過去に類を見ないと強調します。
クマの凶暴化要因:兄弟行動と「一撃多殺」
北上市だけでなく、宮城県栗原市でも異常なクマの行動が確認されています。10月3日のキノコ狩りでの襲撃では、女性が死亡し、別の一人が行方不明となる「一撃多殺」が推定され、これも前例がありません。米田所長は、東北地方のツキノワグマがこれほど凶暴化した原因究明が必要とし、北上市のクマがもし兄弟だった場合、分析の糸口になると推測します。ツキノワグマは通常2歳前後で単独行動に移りますが、近年3~4歳になっても兄弟で行動を共にする例が増加。複数のクマは互いの攻撃性を触発し、単独では見られない残虐性を発揮することが観察で明らかになっています。温泉旅館従業員がクマに「連れ去られた」行動も非常に珍しいとされます。
栗原市や北上市で相次ぐクマの異常襲撃。人間と目が合った瞬間のツキノワグマの凶暴な眼差し。
頻発するツキノワグマの人身被害と異常な凶暴性は、クマの生態変化と人間との関係の根本的な見直しを迫ります。前例のない残虐な襲撃が多発する中、専門家による詳細な調査と、人間とクマの適切な共存関係の早急な再構築が不可欠です。
出典
出典:Yahoo!ニュース / デイリー新潮
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