首都圏の鉄道で遅延が多い路線はどこか。鉄道ジャーナリストの梅原淳さんは「JR東日本の路線で、遅延証明書がもっとも発行されたのは中央・総武線各駅停車だった。だが、詳細を調べると『運転見合わせ』の件数が非常に少なかった」という――。
【図表】「運転見合わせ」のデータ一覧(2024年4月1日~9月30日)
■「JR中央線は遅延が多い」は本当か
筆者のもとにはマスメディア関係者を中心に鉄道に関するさまざまな問い合わせが舞い込む。なかでも多いのは、ある特定の路線を走る列車がよく遅れるのはなぜかというものだ。
そして「ある特定の路線」はほぼ一つに集約される。首都圏のJR東日本中央線のうち、快速電車が走る中央線快速線だ。
中央線快速線は東京駅と高尾駅との間の53.1kmを結ぶ路線で、東京都をほぼ東西に貫く。
大多数はこの区間内を走る通勤電車で、快速のほか通勤快速、特別快速略して特快が運転されている。立川駅で分岐する青梅線に直通して青梅駅方面を発着する列車も設定されているし、同じ中央線でも高尾駅からさらに西方の大月駅や富士山麓電気鉄道河口湖線の河口湖駅を発着するものも多い。
以上を合わせた列車の本数をJR東日本は公表していない。筆者が数えるべきだが間違いも多いので、『2021(令和3)年版都市・地域交通年報』(運輸総合研究所、2024年7月)に頼ると、中野駅から新宿駅までの都心方向限定で2019(令和元)年度は平日に特急列車を除いて快速、通勤快速、特快が1日286本運転されていたという。しかも、ピーク時の朝8時台には2分おきに30本の列車が発着していた。
当時の時刻表を見ると新宿駅では朝6時05分から深夜0時03分までの17時間58分にわたって中央線快速線に列車が運転されていたから、平均して3分46秒おきに電車が発着していたこととなる。
なお、ずいぶん”朝寝坊”に見えるが、実は2020(令和2)年3月のダイヤ改正まで、早朝・深夜には御茶ノ水駅と中野駅との間で快速などが走る線路に列車は通っていなかった。もちろん列車自体はあり、いま挙げた区間では中央線・総武線各駅停車の列車が走る線路を通っており、普段であれば快速が通過する駅にも停車していたのだ。