「闇アカウント」と呼ばれる匿名のオンラインアカウントが、現代社会において深刻な問題を引き起こしています。闇バイトや詐欺といった犯罪に悪用されるケースが急増しており、SNSなどが身近になった今、その危険性は見過ごせません。櫻井裕一氏と高野聖玄氏の著書『匿名犯罪者』でも指摘されています。
オンラインで横行する闇バイトや詐欺に悪用される匿名の「闇アカウント」の危険性を象徴するイメージ画像
「闇アカウント」とは何か?
匿名性を隠れ蓑に違法行為を行うことを目的としたSNSなどのアカウントを指します。これらのアカウントは、その匿名性ゆえに追跡が難しく、犯罪組織や個人が悪用するための温床となっています。
犯罪の「入口」となる闇アカウント
これらのアカウントは、闇バイトの募集や、詐欺行為の実行拠点として機能します。特にX(旧ツイッター)やインスタグラム、ティックトックといった広く利用されているプラットフォームで顕著です。若者をターゲットに「高収入」「簡単作業」「即金」といった曖昧で魅力的な言葉を使って求人情報を掲載し、実際には特殊詐欺の受け子や、匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)による強盗事件の実行役などを募集する事例が多数報告されています。これらの投稿は、一見すると正規の求人広告のように見えるため、多くの人々、特にインターネットやSNSに慣れていない若者が知らず知らずのうちに犯罪に巻き込まれる事態を招いています。いわばインターネット空間における、犯罪行為の新たな拠点と言えるでしょう。
多様な詐欺に悪用される闇アカウント
闇アカウントは、闇バイト募集だけでなく、架空取引や投資詐欺、ねずみ講、当選詐欺といった様々な手口の詐欺にも頻繁に利用されています。商品やサービスを提供するように見せかけて金銭を騙し取った後、すぐに連絡を絶つケースや、実態のない投資話への執拗な勧誘、あるいは存在しない懸賞に当選したと偽って手数料などを要求する手口などが代表的です。これらの詐欺は巧妙化しており、被害が後を絶ちません。
個人情報流出や二次被害のリスク
これらの犯罪行為を通じて、個人情報が抜き取られたり、さらに別の犯罪に利用される二次被害のリスクも伴います。一度個人情報が流出すると、悪用されて新たな詐欺の標的にされたり、自身の知らないところで犯罪に関与させられたりする危険性があり、深刻な被害につながる可能性があります。
闇アカウントの存在は、匿名であることの危険性を改めて浮き彫りにしています。インターネット上の見知らぬアカウントからの誘いや情報には常に警戒心を持ち、その真偽を慎重に見極め、安易に個人情報を渡したり金銭を支払ったりしないなど、自衛することが現代社会では不可欠です。
参考文献:
櫻井裕一・高野聖玄『匿名犯罪者―闇バイト、トクリュウ、サイバー攻撃』(中央公論新社)
Yahoo!ニュース(ダイヤモンド・オンラインより転載)