ここ数年、日本の採用市場はかつてないほど厳しさを増し、「人手不足」は多くの企業にとって喫緊の課題です。約10年前と比較し、採用環境は劇的に変化しました。かつてはコストや時間を気にする声も聞かれましたが、現在では人が集まらない「採用難」の時代へと変貌しています。この構造的な変化の背景には何があるのでしょうか。
データが示す採用難の現実
採用を取り巻く環境の変化は、客観的なデータからも明らかです。リクルートワークス研究所の大卒求人倍率は、2013年卒の1.27倍に対し、2025年卒では1.75倍へと上昇しています。この数字は、企業が希望する人材を確保することがいかに難しくなっているかを示しており、かつてのような「待っていれば人が来る」という時代は終わりを告げました。
生産年齢人口の減少という構造的要因
採用難の最も根本的な原因は、「採用される側」、すなわち働くことが可能な人々の数の減少にあります。総務省の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」によれば、日本の生産年齢人口(15歳〜64歳)は1995年の約8716万人をピークに減少に転じました。その後も一貫して減少し続け、2020年には約7410万人まで減少しています。さらに今後10年間で約500万人以上減少すると予測されており、これは国内有数の人口を誇る福岡県一つが消滅するのに等しい規模の減少です。
なぜ「ここ数年」で人手不足が深刻化したのか
生産年齢人口の減少は1995年から始まっていましたが、総務省統計局の労働力調査が示す労働力人口(働く意欲と能力のある15歳以上の人口)は、近年まで大きく減少していませんでした。これは、主に女性や高齢者の就業率の上昇、そして外国人労働者の増加によって、減少する生産年齢人口を労働力供給で補ってきたためです。
しかし、コロナ禍が終息し経済活動が活発化する中で、この労働力供給のメカニッシュは限界を迎えつつあります。女性の労働力率は過去最高水準に達し、外国人労働者数も過去最多を更新しています。つまり、これまでの供給増加要因がこれ以上大幅な伸びを期待しにくくなった結果、生産年齢人口の継続的な減少が「人手不足」という形で表面化し、ここ数年で急速に深刻さを増しているのです。
日本の深刻な人手不足、背景にある構造的要因
まとめ:構造的な課題としての「人手不足」
近年の日本の人手不足深刻化は、生産年齢人口の減少という長期的な構造的要因と、女性、高齢者、外国人といった労働力供給源が限界に近づいているという複合的な要因によるものです。この現実を踏まえ、企業は対応を迫られています。
参照元
- リクルートワークス研究所 大卒求人倍率
- 総務省 住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数
- 総務省統計局 労働力調査