東京都議選で、新たな地域政党「再生の道」(代表:石丸伸二氏)は厳しい結果に終わりました。擁立した候補者42人全員が落選。昨年の都知事選で次点となり注目を集めた石丸伸二氏が率いる党でしたが、今回の東京都議選では期待された「風」は吹きませんでした。石丸氏自身は出馬せず、無名新人候補の後方支援に徹しましたが、支持拡大には繋がりませんでした。
安芸高田市長として知られ、昨年の都知事選に突如として立候補し、SNSを駆使して165万票以上を獲得した石丸氏は、今年1月に「政治屋を一掃する」という目標を掲げ新政党を旗揚げしました。「再生の道」は独自の路線を打ち出し、当選者の任期は「2期8年を上限」とし、党議拘束をかけない方針を示しました。そして最大の特徴は「党としての政策は掲げない」という異例の方針でした。
石丸伸二代表が東京都議選候補者擁立に関する記者会見を行う様子
候補者の選考方法も独特でした。都民から公募し、石丸代表との面接映像などをYouTubeで公開する「公開オーディション」形式を採用。1128人の応募者から「仕事ができるか」を基準に42人を選抜しました。最終候補者には大手人材会社や不動産会社出身者、金融プロなどハイスペックな人材が集結。石丸氏は「超難関、圧倒的」と自賛し、4月の会見では候補者の年収分布に言及。「年収1000万円以上が64%」と、「稼ぐ力」を強調しました。
リーダーである石丸氏自身は都議選に出馬せず、経験の浅い社会人候補たちの後方支援に徹しました。候補者と共に選挙カーに乗り、司会進行を務めたり、自己紹介を促したりとサポートを行いました。都内を精力的に回り、街頭演説は100回実施。石丸氏は選挙戦を振り返り、「候補者の演説のレベルアップ度合いが半端なかった」「全体の評価として期待通り」と、候補者たちの成長に手応えを語りました。
再生の道代表として東京都内で街頭に立ち、演説を行う石丸伸二氏
しかし、この独自路線は有権者の心を掴むには至りませんでした。各党が物価高対策などを具体的に訴える中、党としての政策を打ち出さないスタイルは、アピール力に欠けたと言えます。また、「全員が実力者」とされたハイスペックな候補者たちの声が、一般的な有権者には届きにくかった可能性も指摘されています。さらに、抜群の知名度を誇る石丸代表にばかり注目が集まり、聴衆の関心が候補者個人に向きづらかった側面もあったと考えられます。子育て世代の女性からは「インタビュアーみたいな街頭演説は新鮮」との声があった一方、多くの有権者は石丸氏の「都知事になってほしい」という待望論を口にしており、石丸氏のイメージが都知事選と強く結びついていたことが、政党候補者への得票に繋がらなかった要因と言えるでしょう。また、立ち上げたばかりの政党ゆえの経験不足も露呈しました。選挙期間中に選挙カーが単独事故を起こすなど、他党との地力の差が出たことは否めません。
結果として、「再生の道」は東京都議選で議席を獲得できませんでした。政策の不在、候補者と有権者の距離、そして石丸氏個人への根強い関心などが要因として考えられます。しかし、石丸氏自身の存在感は依然として高く、今後の政治活動、特に都知事選への再挑戦に注目が集まります。