結婚式で流す音楽にJASRAC著作権料は必要?「私的使用」では済まない理由と利用料

店舗や結婚式、音楽教室などで音楽を利用する際、しばしば話題となるのがJASRAC(日本音楽著作権協会)への著作権使用料の支払いです。特に結婚式でのBGMや映像での楽曲利用について、「自分で買ったCDなのに」「個人的な場なのに」と疑問を感じる方もいるかもしれません。本稿では、なぜ結婚式での音楽利用が著作権法上の「私的使用」に当たらないのか、そして具体的な利用許諾の方法や利用料について解説します。

なぜ結婚式での音楽利用は「私的使用」に当たらないのか

かつては結婚披露宴での音楽使用も比較的緩やかでしたが、著作権に対する意識の高まりとともに状況は変化しました。多くのゲストを招いて音楽を聴く行為は、著作権法第30条に定める「私的使用」の範囲を超えるものと解釈されます。私的使用とは、個人的にまたは家庭内で使用することを指し、披露宴のように多数の人が集まる場での使用はこれに該当しません。過去にはブライダルビデオ製作会社に対して複製権侵害を巡る訴訟が起こされた事例もあり、事後的に和解に至っていますが、こうした背景からも著作権者の許諾が必要であることが明確になっています。

結婚式での音楽使用のイメージ結婚式での音楽使用のイメージ

JASRACへの利用許諾申請と具体的な利用料

結婚式で著作権のある楽曲を使用する場合、JASRACへの利用許諾申請が必要です。JASRACのウェブサイトでは、個人(新郎新婦)または事業者(式場や制作会社)向けの申請フォームが用意されています。個人がプロフィールビデオや余興ビデオで複製利用する場合の利用料は、動画内使用で1曲あたり2000円、静止画・BGM使用で1000円、静止画で歌詞字幕表示を伴う場合は1500円です(2024年4月1日時点)。例えば、動画内で3曲を使用すると合計6000円となります。なお、市販のCDなどの音源を使用する場合は、著作権(JASRAC等)だけでなく、著作隣接権(日本レコード協会等)の許諾も別途必要となる点に注意が必要です。

利用料は「CDより高い」?背景と近年の動向

「CDを1枚買うより利用料が高いのでは?」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。これは、CD購入が「個人的に音楽を聴く権利」を得る行為であるのに対し、披露宴での利用は「多数の人に聞かせる権利」や「映像に複製する権利」という異なる権利の許諾を得るためです。音楽の価値や利用形態に応じた対価として設定されており、近年は利用料が見直される傾向にあります。

無断使用のリスク

JASRACは著作権を適切に管理・保護しており、無断での楽曲使用に対しては厳しい姿勢を取っています。「少しくらいなら」「ばれないだろう」と安易に考えて使用すると、著作権侵害として民事上の差止め請求や損害賠償請求を受けたり、悪質な場合には刑事告訴される可能性もあります。ルールを理解し、適切に手続きを行うことが重要です。

結婚式での音楽利用は、多くの人が集まる場であるため著作権法上の「私的使用」には該当せず、著作権者であるJASRACなどへの利用許諾申請と使用料の支払いが必要です。市販音源の場合は日本レコード協会などへの許諾も求められます。適切な手続きを踏むことで、安心して大切な日を演出することができます。無断使用のリスクを避け、ルールに則った利用を心がけましょう。

参考資料:
中村真『世にもふしぎな法律図鑑』(日本経済新聞出版)