経済的に恵まれない環境から身を起こし、奨学金という名の借金を背負った元国税専門官である著者。彼は東京国税局で富裕層を相手とする相続税調査を10年担当し、日本トップクラスの資産家たちの「リアルな習慣」に触れてきました。お金に悩まされない人生の鍵を探る中で見えてきた富裕層の重要な習慣の一つが、「人に会う時間」、すなわち人脈構築を最優先することです。彼らはなぜ、これほどまでに人とのつながりを重視するのでしょうか。その実態に迫ります。
高級会員制クラブの世界とその価値
世の中には、選ばれた一流の人々が集う高級会員制クラブが存在します。著者が過去に、国際的なビジネスを手がける実業家からの招待で訪れた都内のクラブは、都会の喧騒から切り離された静かな空間でした。広々としたロビー、洗練されたレストランやプール、図書館、ジムなど、様々な高級施設が完備され、英語が飛び交う国際的な雰囲気の中で富裕層らしき人々が談笑していました。特徴的だったのは、ピリピリした雰囲気ではなく、独特のゆったりとした空気が流れていたことです。
このクラブへの入会は容易ではなく、既存会員からの推薦が必須で、300万円を超える高額な入会金に加え、毎月の会費もかかります。一般の会社員や公務員には手の届かない敷居の高さですが、これほど高額な費用をかけても人々が利用する理由は、「投資に見合う、あるいはそれ以上のリターンが見込めるから」に他なりません。限られた質の高い人々が集まる場では、自然な形で親睦を深めやすく、新たなビジネスチャンスや大きな協業につながる可能性が高まります。このように、富裕層は目に見えるものだけでなく、「人脈」という見えない価値にも惜しみなく投資する習慣を持っています。
富裕層のビジネスにおける信頼関係や人脈構築を示す握手のイメージ
世界的な人脈を築いた人物の流儀
著者をこの高級クラブに招いてくれたのは、毎年数千人規模で人脈を広げ、マザー・テレサやイギリス王室関係者とも会ったことがあるという、まさに「人脈の達人」です。彼が自分に課している「マイルール」は、会食の場ではできるだけ参加者全員と言葉を交わすこと。さらに、単に挨拶するだけでなく、自分が持つ有益な情報を提供する「お土産」を渡し、相手からの信頼を得て、人間関係をより深く、より広く築いています。彼にとって、情報提供は単なるサービスではなく、相手への貢献を示す手段なのです。
富裕層が人脈を何故大切にするのか
このような具体的な例からもわかるように、富裕層が積極的に人とのつながりを増やし、それを大切にするのは、それが自分自身の成長に不可欠であると深く理解しているからです。彼らは、他者との交流を通じて新たな知識や視点を得たり、自己を磨いたりしています。また、単に利益を追求するだけでなく、他者への貢献心が強いという側面も持ち合わせています。これは、著者自身が独立して強く感じていることですが、ビジネスは突き詰めれば人間関係から生まれ、発展していくものです。相手の期待に応え、可能な限りの価値を提供することこそが、仕事の本質だと著者は考えています。富裕層を富裕層たらしめている根源には、人間関係への投資を惜しまない揺るぎない習慣があるのです。
富裕層に学ぶ人脈形成の習慣
私たちもまた、お金に悩まされない人生を目指す上で、富裕層が見本とする「人とのつながり」の形成・維持に、積極的に時間と労力を投資する習慣を身につけるべきです。それは単なるネットワーキングを超え、自己成長と貢献を通じた豊かな人生への投資となるでしょう。
元国税専門官として富裕層と接してきた著者の視点から、質の高い人脈構築が彼らの最も重要な「習慣」の一つである現実が見えてきました。高級クラブでの交流から会食での振る舞いまで、彼らは意識的に人とのつながりを深め、そこから生まれる価値を引き出しています。この「人間関係への投資」こそが、富裕層の成功と富を維持・発展させる強力な原動力なのです。
参考資料:
- 元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者(ダイヤモンド社)
- Yahoo!ニュース (https://news.yahoo.co.jp/articles/98e597be740da63e02690ecbfc39a35a721fea92)