6月6日から公開されている映画『国宝』の勢いがすごい。
吉田修一の同名小説を映画化した本作。15歳の時に抗争の末に父親・権五郎(永瀬正敏・58)を亡くした、任侠一門に生まれた少年・立花喜久雄(吉沢亮・31/少年時代は黒川想矢・15)が主人公。その美しい容姿を見込んだ歌舞伎役者・花井半二郎(渡辺謙・65)に引き取られ、血筋も生い立ちも異なる半二郎の実子・俊介(横浜流星・28、少年時代は越山敬達・15)と切磋琢磨しながら、歌舞伎役者として芸の道に人生を捧げる姿を描いたヒューマンドラマだ。
【画像】圧巻の演技を見せた15歳俳優・黒川想矢にも注目。主人公“喜久雄”の少年時代を演じ、吉沢亮にしっかりとバトンを渡した。
6月16日に発表された13~15日の映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)では前週よりも1つ順位を上げて2位だった。こういったランキングは週を重ねるごとに順位を落としていくことが常である。にもかかわらず、ランキングを上げたことを鑑みると、内容を見た人の口コミが影響しているのだろう。SNSをはじめ、各所で好評の声がますます寄せられ、何週にもわたって上位をキープしていくかもしれない。そんな今年の話題作になりそうな本作の魅力をネタバレなしで伝えたい。
吉沢亮の“化け物”すぎる演技が心を奪う
本作が話題を呼んでいる一番の理由はキャスト陣の演技力の高さだ。言ってしまえばストーリーそれ自体は真新しいものではない。「元ヤクザが……」という導入は珍しくないし、“才能”に恵まれた喜久雄と“血”に恵まれた俊介の対立構造がメインでストーリーが展開されるが、そのパターンも映画や漫画でよく描かれている。
ストーリーが“ベタ”だからこそ、自然と演技に注目が集まりやすくなるが、その演技が“化け物”すぎるため絶賛せざるを得ない。特に吉沢がすさまじい。こんなことを言ってしまうと、歌舞伎役者をはじめ、歌舞伎愛好家に怒られそうだが、吉沢は本物の歌舞伎役者と思わせる演技を見せている。
また、吉沢自身が役作りのために歌舞伎と真摯に向き合ってきた姿と、歌舞伎役者として努力を重ねる喜久雄の姿がクロスオーバーして、何重にも吉沢・喜久雄が演じる姿に心を奪われた。