かつて、民放各局が恐れた言葉に「振り向けばテレ東……」があった。これは、視聴率が常に最下位だったテレビ東京よりも、下から2番目になったテレビ局を揶揄する表現だった。しかし現在、フジテレビは振り返っても誰もいない、さらに厳しい状況に直面している。フジテレビの昼の帯番組「ぽかぽか」(11:50〜13:50)がテレビ東京の「昼めし旅〜あなたのご飯見せてください!〜」(12:00〜13:40)に視聴率で劣る日があることが指摘されているが、これは一過性の現象ではないようだ。民放プロデューサーは、フジテレビが現在、負のスパイラルに陥っていると述べている。「ぽかぽか」の視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯)は1%台という日も珍しくなく、「昼めし旅」に敗北することもあるという。この低迷は、後続の番組にも大きな影響を与えている。
フジテレビの午後の苦戦と「医龍」再放送
「ぽかぽか」の後、フジテレビはドラマの再放送枠(13:50〜15:45)を設けている。6月12日からは、坂口憲二主演の医療ドラマ「医龍―Team Medical Dragon―2」の再放送が開始された。「医龍2」は2007年に放送され、平均視聴率17.2%を記録した人気シリーズである。
一方、テレビ東京は「昼めし旅」の後、「午後のロードショー」(13:40〜15:40)、通称“午後ロー”を放送している。この映画枠は1996年4月にスタートし、来年で30周年を迎える。かつてはB級映画のイメージが強かったが、近年は企画特集が増え、映画ファンからも注目される存在となっている。
医龍再放送で主演を務める坂口憲二。フジテレビの昼帯ドラマ枠で放送されている。
「医龍」再放送が「午後ロー」に敗北
フジテレビの再放送枠は約2時間あり、ドラマを2話続けて放送する構成になっている。「医龍2」の再放送初日である6月12日、14時台の視聴率は1.4%、15時台は1.3%にとどまった。これに対し、同日の「午後のロードショー」が放送した映画「エネミー・オブ・アメリカ」は視聴率2.4%を記録した。個人視聴率で見ても、「医龍」は0.6%、「午後ロー」は1.2%とダブルスコアの差がついた。
かつて大ヒットした人気ドラマ「医龍」の再放送をもってしても、フジテレビはテレビ東京の「午後のロードショー」に敗れる結果となった。なぜ「医龍」で数字が取れないのだろうか。
再放送不振の背景:視聴者層とのミスマッチ
「医龍」シリーズは第4弾まで制作され、坂口憲二の代表作の一つである。今年4月期の月9ドラマ「続・続・最後から二番目の恋」で彼が俳優業に復帰したことを受け、再放送が決定したのだろう。坂口の他にも小池徹平、阿部サダヲ、佐々木蔵之介、夏木マリ、岸部一徳など豪華キャストが出演しており、改めて見ても非常に魅力的なコンテンツであることは間違いない。
しかし、放送時間が大きな要因として考えられる。当時、「医龍」に夢中になっていた視聴者は、現役のサラリーマン層が中心だった。一方、午後の再放送ドラマを視聴する層は年配者が中心となる傾向があり、この層に響くドラマの方が視聴率を取りやすい。テレビ朝日の長寿ドラマ「相棒」の再放送が好例として挙げられる。「相棒」は15時50分から16時48分まで再放送されており、その前の13時55分から15時50分の枠でも2時間ドラマなどが再放送されている。再放送時間帯の視聴者層と「医龍」のオリジナル放送時の主要視聴者層との間にミスマッチが生じている可能性が高い。
結論
フジテレビは現在、昼の帯番組から午後の再放送枠にかけて、テレビ東京に対し厳しい視聴率争いを強いられている状況にある。かつて高視聴率を記録した人気ドラマ「医龍」の再放送をもってしても、「午後のロードショー」に敗れたことは、フジテレビの昼帯における苦境の深刻さを示している。人気のコンテンツであっても、放送時間帯の視聴者層との適合性が、再放送の成否を分ける重要な要素となっていると言えるだろう。