【ワシントン=黒瀬悦成】1989年12月2、3日、当時の父ブッシュ米大統領と旧ソ連のゴルバチョフ書記長が地中海のマルタ島沖で会談し、東西冷戦の終結を宣言して30年。「マルタ会談」に米国防次官(政策担当)として参加したポール・ウォルフォウィッツ元国防副長官(75)が産経新聞のインタビューに応じ、会談は米ソ首脳が信頼関係の下で冷戦を確実に終結させるための「雰囲気作り」を果たしたという意味で「極めて重要だった」と意義づけた。
ウォルフォウィッツ氏は冷戦終結から30年を経た現在、国際社会にとって中国が「かつてのソ連よりもはるかに手ごわい競争相手と化している」と指摘し、同盟・友邦諸国とともに対応していく必要性を訴えた。
ウォルフォウィッツ氏は、中国が通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)などを通じて世界的なハイテク覇権の確立を図っていることに関し、「中国によるサイバー空間の乗っ取り行為であり、極めて憂慮すべき事態だ」と強調。米企業などが所有する知的財産権の侵害も含め「中国による商業や経済分野での振る舞いには弁護の余地がない」と非難した。
また、かつて自身が総裁を務めた世界銀行に関し「世銀は中国に対して融資を行っているが、中国は自国の予算で(新疆ウイグル自治区のイスラム教徒らを拘束するための)強制収容施設を建設している。恥ずべきことだ」と述べ、対中融資を見直すべきだとの考えを示した。
中国政府によるイスラム教徒弾圧については「(収容施設での)洗脳や、(他民族の)中国人との結婚を通じてウイグル人の民族意識の一掃を図る、『文化的ジェノサイド(大量虐殺)』だ」と批判した。