日産自動車は24日、横浜市の本社で定時株主総会を開いた。冒頭、イヴァン・エスピノーサ社長は業績悪化や工場閉鎖、人員削減について陳謝し、「業績回復は急務だ」と繰り返して再建計画などへの理解を求めた。しかし、株主からは業績悪化や無配に対する不満が噴出し、怒号も飛び交う荒れた展開となった。業績不振にもかかわらず高額な取締役報酬への批判も続出した。
工場削減計画と地域社会の懸念
エスピノーサ社長は、国内外の車両工場を現在の17から2027年度までに10に減らす計画について、具体的な工場名は明かさず「決まったものはない」と述べた。関係者によると、国内では神奈川県横須賀市の追浜工場と、生産子会社である日産車体の神奈川県平塚市の湘南工場が閉鎖対象として検討されている。
株主からは「追浜工場は(過去に閉鎖された)村山工場のように町が吹っ飛んでしまう」との懸念の声が上がった。これは、工場閉鎖が地域経済や雇用に与える深刻な影響を示唆するものだ。
日産自動車の定時株主総会で発言するイヴァン・エスピノーサ社長(横浜市)
役員報酬への批判と株主の疑問
業績悪化や無配転落にもかかわらず、取締役の報酬が高額であることについても多くの批判が出た。23日に提出された有価証券報告書によると、2025年3月期に報酬額が1億円以上の役員は5人おり、退任した内田誠前社長の総報酬額は3億9000万円だった。これには退任に伴う1億7500万円が含まれている。前年の6億5700万円からは大幅に減少したが、株主の不満は根強かった。
業績悪化の経緯やホンダとの統合交渉破談について、内田前社長に直接説明を求める株主もいた。しかし、内田氏は回答せず、社外取締役の木村康氏やエスピノーサ社長が代わりに説明を行った。
米国関税の影響と立て直し戦略
米国による関税措置の影響は、日産の業績に重くのしかかっている。2025年4━6月期の連結営業損益は2000億円の赤字となる見通しが示された。
エスピノーサ社長は、関税の影響を抑えるため、米国で生産している6車種に「マーケティング活動を集中させる」方針を表明した。特に人気の高いクロスオーバーSUVや、高級車ブランド「インフィニティ」を強化することで、収益性の改善を目指す。
株主提案の否決
会社が提案した取締役12人選任などの2議案は可決された一方、株主提案の5議案は全て否決された。総会の所要時間は3時間06分に及び、株主の関心の高さと議論の白熱ぶりがうかがえた。
物言う株主として知られる投資運用会社のストラテジックキャピタルは、生産子会社である日産車体の非公開化と完全子会社化に向けた定款の変更を求めた。その他、総会運営への不満から「是正役」の新設、取締役報酬の見直し、2025年3月期の期末配当として1株当たり20円の実施などを求める株主提案が出された。
報酬見直しを提案した株主は、「取締役の報酬と企業価値の連動性が欠如している」と強い懸念を表明し、業績や株価の下落と報酬の減額を連動させる制度の創設を求めた。退任した内田氏を社長に選んだ木村康、永井素夫、井原慶子の社外取締役3氏の不再任を求める株主提案もあったが、会社側の取締役選任案への反対表明と見なされ、独立した議案としては取り扱われなかった。
日産の2025年3月期決算は6708億円の最終赤字を計上し、前の期(4266億円の黒字)から4年ぶりの無配転落となった。ロイターは株主の許可を得て株主向けオンライン配信を視聴し、総会の様子を報じた。