都議選惨敗の自民党、参院選へ「背水の陣」:石破政権は支持基盤崩壊の危機か

6月22日に投開票が行われた東京都議会議員選挙は、政局に大きな衝撃を与えました。特に与党である自民党は、過去最低の獲得議席数に終わる都議選での歴史的な惨敗を喫し、首都決戦での敗北は、石破政権の今後の運営、そして目前に迫る参議院選挙の行方に暗い影を落としています。備蓄米放出による「令和のコメ騒動」への対応で、内閣支持率が一時的に持ち直したとの見方もありましたが、選挙結果は自民党の現状に対する有権者の厳しい審判を突きつける形となりました。

都議選「歴史的大敗」とその波紋

今回の都議選で、自民党の獲得議席はわずか21にとどまりました。これは同党にとって過去最低の結果であり、都議会第一党の座を小池百合子知事が特別顧問を務める都民ファーストの会に明け渡すこととなりました。「歴史的大敗」「惨敗」と主要メディアがこぞって報じたことに対し、投開票の翌日、石破茂首相(68)は「非常に厳しい審判をいただいた」と、神妙な面持ちでコメントしました。

選挙戦の序盤、自民党内にはある程度の楽観ムードが存在したと、政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は解説します。小泉進次郎農水相による備蓄米の市場放出が、物価高に苦しむ国民の評価につながり、石破政権の支持率を押し上げたという分析があったためです。しかし、そのムードは長くは続きませんでした。都議選投票日を目前に控え、石破首相が突如として参院選の主要公約の一つに2万円の現金給付を打ち出したことが、状況を激変させます。この政策は世論から「バラマキ」との強い批判を一気に招き、党内からも「何を考えているのか」と困惑や反発の声が噴出する中で、自民党は都議選に突入せざるを得ない状況に追い込まれたのです。

小政党の台頭と自民支持基盤の崩壊

今回の自民党の惨敗には、他の政党の躍進も大きく影響しています。特に、9議席を獲得した国民民主党と、3議席を得た参政党の存在が、自民党が従来持っていた票田を切り崩したと指摘されています。

政治部デスクによると、一時は山尾志桜里氏の公認問題などで支持が低迷したかに見えた国民民主党ですが、今回の都議選では手堅く議席を伸ばしました。生活に根ざした具体的な政策を訴求したことが功を奏し、特にアベノミクス以降、自民党を支持する傾向にあった都市部の20代、30代といった若年層や中間層の票を一定数獲得したと分析されています。一方、参政党は、自民党の伝統的な支持基盤である保守層の一部を取り込むことに成功しました。かつて自民党の「岩盤」とも言われた支持層が分散したことが、自民党の決定的な敗北につながったとの見方が強まっています。

都議選惨敗の自民党、参院選へ「背水の陣」:石破政権は支持基盤崩壊の危機か
東京都議選惨敗を受け、記者団の質問に答える石破茂首相

若年層から保守層まで、幅広い層で票の流出を招いた自民党は、深刻な支持基盤の弱体化という課題を突きつけられました。残された時間はわずかです。7月3日公示、20日投開票の参議院選挙に向けて、自民党はまさに「背水の陣」で臨むことを余儀なくされています。

支持者の「失望」:長年の課題未解決が招いた結果

今回の都議選の結果が示す、自民党支持層の「離反」について、元自民党事務局長で選挙・政治アドバイザーの久米晃氏は、より深い構造的な問題に根差していると指摘します。「昨年の衆議院選挙で自民党は大敗しましたが、その時に問われた有権者の不満や懸念が、その後何一つ解決されないまま今回の都議選を迎えてしまった」ことが根本原因だと分析しています。

都議選の出口調査から明らかになったのは、驚くべき現状です。「自民党支持者であると答えた有権者のうち、実際に自民党候補者に票を投じたのは5割強にとどまった」という結果は、自民党支持層の間に党や現政権に対する「強い失望感」が広がっていることを如実に示しています。この失望感は、特定の政策だけでなく、少子化対策、賃金上昇、物価高抑制といった、国民生活に直結する長年の課題に対する政府の対応に結論が出ない状況が積み重なった結果だと久米氏は見ています。

このような支持層の「離れ」を食い止められない限り、本来あるべき姿とされる「自民党支持者の8割程度が自民党候補に投票する」という状況を回復することは不可能であり、来たる参議院選挙でも都議選と同様の厳しい結果が待っているだろうと久米氏は警鐘を鳴らします。小泉農水相による備蓄米放出効果で支持率が「若干上がったかもしれない」という見方はあったものの、今回の都議選の現実が、その支持が「全くの張りぼてであった」ことを露呈させてしまった、と久米氏は厳しく評価しています。

都議選での歴史的な敗北は、自民党が長年にわたって抱えてきた課題、特に支持基盤の弱体化と国民の不満の根深さを改めて浮き彫りにしました。間近に迫った参議院選挙は、石破政権と自民党にとって、この厳しい現実を乗り越えられるかどうかの正念場となるでしょう。来たる参院選に向けて自民党がどのような対策を取り得るのか、そしてその成算はどこにあるのかについては、6月26日発売の「週刊新潮」にて識者による詳細な分析と解説が掲載されています。

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