CBN入りのクッキーを摂取した大学生が建物から飛び降りるという衝撃的な事故が発生しました。このCBN 事故を受け、厚生労働省は合法を謳う製品でも健康被害のリスクがあるとして異例の注意喚起を行っています。本記事では、現在の日本の法制度におけるCBNの位置付けを確認しつつ、このCBN 注意喚起が示唆する業界構造上の課題と社会的な責任について深掘りします。
具体的な事故として報じられているのは、5月に発生した、CBNクッキー摂取後の大学生の飛び降り事件です。幸い命に別状はなかったものの、当該製品には「CBN 1000mg」と高濃度が明記され、「どこまでも沈むような体感力」といった刺激的な宣伝文句が使用されていました。また、SNSでの著名人によるPR投稿が購入のきっかけになったという証言もあり、問題の根深さを示唆しています。
CBNなどのカンナビノイド製品と関連アイテムのイメージ写真
CBNは現在の日本で「合法」だが…
まず強調すべきは、CBN自体は現行の日本の法律において違法な成分ではないという点です。天然の大麻草に含まれるカンナビノイドの一種であり、化学合成された精神作用物質であるHHCHやTHCHといった「合成カンナビノイド」が次々と指定薬物として規制される中、CBNはCBDと同様に未規制成分とされています。今回の事故においても、摂取者や製造者が刑事罰の対象となったという報道はありません。
潜在的なリスクと業界の「無責任」な構造
しかし、CBNにはCBDとは異なり、以前から精神作用の可能性が指摘されています。私自身もCBD議連などで、他の「レアカンナビノイド」の扱いについて何らかの線引きが必要ではないかと訴えてきました。弊社ワンインチでも、万一の健康被害発生時に「きちんと責任を取れるか」という基準で慎重に検討した結果、2023年の法改正前は扱わず、改正後も製品化を見送ってきた経緯があります。
合成カンナビノイドの規制強化が進むにつれ、より悪影響のある物質に置き換わる形で、CBNのような「キマるかもしれない」成分が特に高濃度エディブルとして流通し、SNS等を通じて急速に流行しました。法改正前後からこうした製品が増え、「脱法ハーブ」的な感覚で安易に手を出してしまう層が存在したことも、今回の問題の背景にあると言えます。
合法とリスクの狭間で:責任ある業界へ
CBNは現時点では合法成分ですが、その潜在的な精神作用や高濃度製品の流通、安易な宣伝は、今回のような健康被害リスクを孕んでいます。事件自体に刑事責任が問われていないとしても、業界全体として消費者保護と安全確保に対する社会的な責任が問われています。曖昧な「合法」性を盾にするのではなく、潜在的リスクの正確な情報提供と、責任ある製品提供が求められる時期に来ていると言えるでしょう。