フェイクニュースが氾濫する現代、信頼できる情報源は不可欠です。『ネイチャー』のような一流科学誌は、医学・ヘルスケア分野で重要な役割を果たします。近年、編集部が特に注目するテーマがマイクロプラスチック汚染です。同誌では今年に入って多数の記事を掲載しており、この問題への科学界の関心の高まりを示しています。
植物による大気中マイクロプラスチックの直接吸収
中国の南開大学を中心とした研究チームが、『ネイチャー』電子版で発表した画期的な研究は、植物の葉が大気中のマイクロプラスチックを直接吸収し、組織内に蓄積することを明らかにしました。これは、生態系や人間の健康に影響を及ぼす可能性のある、これまで見過ごされてきた重要な経路の存在を示唆しています。
研究では、ポリエチレンテレフタレートなどのプラスチック粒子が葉や茎に存在する気孔から取り込まれる様子が観察されました。吸収された粒子は、水分や栄養の通り道である維管束組織や、その表面にある毛状突起に蓄積することが確認されました。
大気中のマイクロプラスチックが蓄積する可能性が示された植物
食物連鎖を通じた人体への懸念
この新たな吸収経路について、『ネイチャー』編集部も重く見ており、オランダのライデン大学環境科学研究所のヴィリー・ペイネンバーグ教授による解説記事を掲載しました。教授は、植物組織内のマイクロプラスチックが食物連鎖を通じて人間に取り込まれる可能性に言及し、注意を促しています。特に、屋外で栽培された野菜から温室栽培より高濃度が検出されたことは、この問題の緊急性を示唆しています。
人体におけるマイクロプラスチック蓄積の既存の知見
人体へのマイクロプラスチック蓄積は以前から研究が進められてきました。2023年、ハワイ大学の研究チームが採取された胎盤サンプルからマイクロプラスチックを検出し、環境科学に関する専門誌『Environment International』誌に発表しています。
これらの研究は、マイクロプラスチック汚染が食卓に影響を及ぼす可能性を示唆します。特に、植物が大気から直接吸収という新知見は、食物連鎖を通じた人体への取り込み懸念を高めます。さらなる研究と対策が急務です。
参考文献
Nature, Environment International, 南開大学, ライデン大学, ハワイ大学