国民民主党の玉木雄一郎代表は25日、「こども減税」によって子育て世代の手取りを増やすという趣旨の投稿を行った。この政策は一見、子育て家庭にとって喜ばしいもののように見えるが、意外にも当事者である子育て世代からは批判的な声が多く寄せられているという。
なぜ「こども減税」というネーミングが子育て世代からの不安を招いているのだろうか。玉木代表は投稿の中で、政策の正式名称ともいえる「年少扶養控除復活」が分かりにくいため、「こども減税」という名称を用いると説明した。このネーミング変更に対して賛成意見も一部にはあるものの、多くの親からは懸念が表明されている。
批判的な意見の核心は、「減税」という言葉が、子どもを持つことに対する「特別な優遇」であるかのような誤解を招きかねないという点にある。実際には、彼らは自分たちが「扶養しているにもかかわらず扶養控除がない」という「子ども差別」や「冷遇」を受けている状況の是正を求めているのであり、新たな優遇を求めているわけではない、と感じている。ネット上の声には「子持ち様などと揶揄されてさらに肩身が狭くなりそう」「子育て支援金が独身税と言われる中で、子ども優遇だと思われたくない」といった不安が見られる。彼らにとっては、これは「優遇」ではなく、長年続く「冷遇」を「是正」する措置なのである。
では、玉木代表が言う「年少扶養控除復活」とは具体的に何を指すのか。現在、16歳未満の子どもを除く、扶養するすべての親族に対して「扶養控除」が認められている。これは、扶養している人数に応じて所得から一定額が差し引かれ、税負担が軽減される仕組みだ。例えば、高齢者を扶養する場合、同居なら58万円、それ以外でも48万円の所得控除がある。
しかし、0歳から15歳までの子どもに関しては、この扶養控除が適用されない。これは、2010年に民主党政権が「子ども手当」(後の児童手当)を導入するのと引き換えに段階的に廃止されたためだ。当時の子ども手当の支給額は、公約の26,000円に対して実際には13,000円にとどまった経緯がある。さらに、その後の自民党政権は、選挙公約で年少扶養控除の復活を掲げながらも実行せず、子どもに対する扶養控除は復活しなかった。
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さらに、2011年からは子ども手当(現:児童手当)に所得制限が設けられた。これにより、一定以上の所得がある子育て世帯は、扶養控除もなく、手当も支給されないという、いわゆる「子育て罰」とも呼ばれる状況が長らく続いてきた。(この所得制限は2024年10月にようやく撤廃されることになった)。
このように、他の世代には認められている扶養控除が、子どもにだけは存在しないという事実は、当事者である子育て世代以外にはあまり知られていないのが現状だ。玉木代表が政策名称を「こども減税」と分かりやすく表現しようとした背景には、この認知度の低さがあると考えられる。しかし、その意図とは裏腹に、「減税」という言葉が招く誤解への不安が、子育て世代からの反発という形で現れたと言えるだろう。
この状況は、「年少扶養控除の復活」が、単なる優遇ではなく、他の扶養対象との間の不平等を解消し、子育てにかかる経済的負担に対する税制上の「冷遇」を是正する措置であるという点を、社会全体が十分に理解していないことを示唆している。
参考資料
- 日本の報道各社の記事に基づく