日本経済、イラン情勢より深刻? 米国「高関税」リスクと求められる政治判断

トランプ米大統領による関税政策の二転三転や、パウエルFRB議長への批判発言を受け、4月以降、世界の株式市場は不安定な動きを見せてきた。特に6月21日には米国がイランへの軍事攻撃に踏み切り、中東情勢は新たな段階に入った。この動きが世界経済に与える影響は、2022年のロシア・ウクライナ紛争時と同様に、エネルギー供給の減少による原油価格の急騰があるかどうかにかかっている。イランは長年の経済制裁で疲弊し、軍事的に劣勢との見方もあるが、大規模な反撃によりホルムズ海峡の航行が困難になれば、原油価格は高騰する可能性がある。一方で、中国やロシアがイランを表立って支援する動きは見られず、イラン単独での軍事行動には限界があるようにも見える。仮にホルムズ海峡の航行が停止すれば、中東からのエネルギー供給に依存する日本を含むアジア諸国が大きな打撃を受ける。米国はエネルギー輸出国であるものの、関税引き上げと世界的な原油高が重なれば、その経済も無傷ではいられない。トランプ大統領自身もイラン攻撃に深く関与する意図はない模様だ。これらの状況を踏まえると、現在の中東情勢の緊迫化が、2022年のウクライナ侵攻時と同等に世界経済のリスクを高める可能性は低いとみられる。実際に、23日にはイランとイスラエルが停戦合意に至ったとの報道もあり、世界経済や金融市場への影響は短期的に収束に向かう可能性が高い。

日本が直面する主要な経済リスク:米国高関税

中東情勢の緊迫化による世界経済への影響が限定的であるとしても、「選挙の季節」を迎える日本は、自動車などへの米国による高関税賦課という、より現実的かつ大きな経済リスクに直面している。トランプ大統領らの関心は当面、中東情勢に傾斜するとみられ、いまだ合意の道筋が見えない日米の関税交渉は進展しない可能性が高い。このまま米国による高関税政策が長期化する可能性が高く、これは日本にとって継続的な「国難」となりうる。

国内政治と経済対策の課題

22日に投開票された東京都議選では、自公の国政与党が議席を減らす結果となった。これは、現在の国内政治の状況が経済課題への対応能力に影響を与えている可能性を示唆する。以前の論評でも指摘したように、減税に一貫して否定的な姿勢をとる石破政権への批判は根強い。参議院選挙に向けた自民党の公約では、一人2万円の現金給付が発表された。しかし、個人消費を持続的に押し上げるためには、恒久的な減税がより効果的であることは明らかだ。それでもなお、自民党主流派の政治家は、その有効性を十分に理解していないように見受けられる。

日本の財政状況の再評価

石破首相らは「減税する財源がない」「消費税は社会保障の維持に必要」などと説明している。しかし、主要G5諸国の構造的財政収支(対GDP比、2024年時点)を比較すると、日本の財政状況は相対的にかなり健全な位置にあることがわかる。長年緊縮財政を続けてきたドイツ(-2.2%)に次いで、日本の財政赤字は小さい(-2.5%)。これに対し、イギリス(-4.5%)、フランス(-5.4%)、米国(-7.7%)と比較すると、日本の財政状況が相対的に良好であることは明確だ。このデータは、「財源がない」という説明が、少なくとも他の主要国と比較した場合においては、必ずしも絶対的なものではないことを示唆している。

参院選を控える石破首相と自民党、経済リスクへの対応が問われる参院選を控える石破首相と自民党、経済リスクへの対応が問われる

中東情勢の即時的な影響が限定的である一方、米国による高関税という構造的な経済リスクは日本にとって看過できない課題であり続けている。相対的に健全な財政状況にもかかわらず、国内政治における効果的な経済対策、特に恒久減税のような手段に対する消極的な姿勢は、この国難への対応能力に疑問を投げかけている。国民が真に必要とする、経済リスクに立ち向かえる政治判断が求められている。

References:
https://news.yahoo.co.jp/articles/4d0db8310a6deb2ae681275cda9a14b7c92d8c51