旧石器時代の約3万年前に台湾から海を渡り沖縄へたどり着いたと考えられている日本人の祖先は、黒潮に逆らい戦略的に航海していたとみられることが分かったと、東京大総合研究博物館の海部陽介教授らのチームが25日付の米科学誌に発表した。丸木舟の実験航海や海流の解析から、当時の人々は黒潮の流れや速さを認識し、諦めずに島を目指して進み続けたとみている。
海部氏らは現生人類がどのように海を越えてきたかを再現する航海プロジェクトを計画し、2019年、台湾東部から男女5人が舟をこいで沖縄県・与那国島へ到達することに成功した。ただ、約3万年前の海で同様に航海できたかどうかは不明だった。
今回、スーパーコンピューターでシミュレーションした結果、19年の出発地より約100キロ北の地点から出発すると、与那国島によりたどり着きやすいことが分かった。また約3万年前の黒潮は、現在よりも流れが10~20%ほど速く、東に傾いていたことが判明。現在よりも海面が約100メートル低く、偏西風が強かったことが原因とみられる。