リチウムイオン電池火災でゴミ処理施設損害 総務省が実態調査


リチウムイオン電池(LIB)については、その使用製品の増加にともない、市区町村が回収したごみに混入したLIBが原因で火災事故が発生し、ゴミの処理が滞るだけでなく多額の修理費用が発生する事態になるなど、社会的な課題になっている。

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LIBの回収・資源化については、製品メーカー等に自主回収等の責務があり、市区町村には一般廃棄物の統括的な処理責任がある。しかし、自主回収の実際の取り組み状況や市区町村による処理について、その全体像は明らかになっていなかった。今回の調査は、こうした背景から、関係機関の実態を把握するために行なわれたもの。

調査対象43市の不燃ごみ等に混入したLIB製品(約2,900点)を分析したところ、最も多かったのはLIB電池単体で、その他は加熱式たばこ、携帯電話、モバイルバッテリー、電気かみそり、電気掃除機の順に多く混入していることがわかった。これらは電池のみを取出すことが困難な製品が多く、LIB製品のうち電池の取り出しが容易なのは1割程度しかない。

LIBが原因とされる火災事故は増加傾向で、2019年の38市(76%)に対して2023年は45市(90%)。5年間で火災事故が発生している47市のうち、火災事故の件数が増加しているのは47市中29市(62%)となっている。5年間の間に廃棄物処理施設等が稼働停止になるような大きな事故が発生したのは15市、17件。廃棄物処理施設のコンベアが損傷し、ゴミ処理が1カ月行なえなくなるケースや、中間処理施設の基幹施設が損傷し、11億円の被害が生じた例もある。

市区町村では、何らかの方法で回収を行なっている市が50市中47市(94%)で、そのうち定日回収を行なっているのは50市中24市(48%)、回収ボックスを設置した拠点回収を行なっているのは50市中12市(24%)。

しかし、市区町村ではLIB等の回収にあたり、財政的負担、処分事業者の確保などの課題があるという。処分事業者が見当たらず、埋立て・焼却・ストックをしている例もあり、保管方法が適切でない事例や、安全な保管・処分方法を整備を要望する声もあった。

調査では、住民はLIBの過半を製造メーカーではなく市区町村に排出している可能性が高く、市区町村は回収した4~5割に近い水準で焼却・埋立て・ストックしている可能性もあるという。調査対象となった50市のうち62%が、LIBの回収について「製品メーカー等が回収すべき」という見解を示している。

こうした事態をうけ総務省は、経済産業省と環境省に対して、製品メーカー等の自主回収対象品目の追加や、市区町村における適切な回収・処分を推進するための情報提供、住民のLIB等排出の実態解明の推進など要請している。

Impress Watch,清宮信志



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