『波うららかに、めおと日和』最終回:蛍と七夕、そして生還。夫婦が見つけた“短くも長い時間”の尊さ

まだ夫婦になって間もない頃、「来年は一緒に蛍を見に行こう」と約束したなつ美(芳根京子)と瀧昌(本田響矢)。ドラマ『波うららかに、めおと日和』最終話では、その約束が無事に果たされた。無数の蛍の光が瞬く水辺に並び、二人は天の川を見上げる。約束から1年が経ったが、一緒にいられた時間は数カ月ほどだった。申し訳なさそうな顔をする瀧昌になつ美は、1年に一度しか会えない織姫と彦星の気持ちになぞらえてこう語った。「会える日が少ないからこそ、今まさにこの時間が、1時間が、1分が、1秒が、特別で大切だから、短くてながぁ〜いんです」。初夏の訪れを告げる蛍は、地上で光り輝くわずか十数日のために、約1年かけて水や土の中で成長する。その儚く美しい光に切なさを覚える私たちも、もしかしたら同じなのかもしれない。46億年の地球の歴史から考えると、人の一生は短い。そのうち大切な人と一緒に過ごせる時間はほんの一瞬。その一瞬一瞬がどれだけ特別なものであるかを、この『波うららかに、めおと日和』最終回は改めて思い出させてくれた。

ドラマ『波うららかに、めおと日和』最終話より、蛍を背景に星空を見上げるなつ美と瀧昌ドラマ『波うららかに、めおと日和』最終話より、蛍を背景に星空を見上げるなつ美と瀧昌

緊急招集を受け、瀧昌と深見(小関裕太)の乗り込んだ艦が暴風雨に巻き込まれ、消息を断つ。そのことをラジオのニュースで知ったなつ美は、不安に押し潰されそうになりながらも気持ちを強く保とうとしていた。

戦時下の不安と、変わらない大切な人を想う気持ち

世界の各地では今なお戦争が続いているが、私たち日本人は表向きは平和な日常を過ごしている。しかし、瀧昌と深見の生死が不明な状態でこの一週間を過ごしたことで、なつ美は、そして視聴者も、少しばかり戦時下に置かれた人たちの気持ちが理解できたのではないだろうか。時代や場所、立場が違っても、大切な人を思う気持ちは変わらない。家族や友人と連絡が取れなければ不安になるし、無事が確認できない間は失うことを想像して怖くなる。軍人の妻としては、いつ別れが来ても動じない強さを持つことが正しいのかもしれない。しかし、人の心は正しさだけで決まるわけではない。

心が疲れたら泣いてもいい

そのことを、何年も何十年も夫・邦光(小木茂光)の帰りを待ち続けてきた郁子(和久井映見)は誰よりも理解している。「心が疲れて泣いてしまうのなら、いくらでも泣いていいのよ」と郁子の大きな懐に包まれ、なつ美と芙美子(山本舞香)は愛する人の無事を願うただ一人の人間に戻っていく。二人に少しだけ笑顔が戻ってきたことに安堵するとともに、こんなふうにずっと笑っていてほしいと思った。

待ち望んだ再会、溢れる涙

そう願う誰もが待ち望んでいた瞬間がついに訪れる。これまで何度も聞いてきた愛しい人の声が耳に届いたなつ美は、急いで玄関へ。瀧昌の姿を認めるとその胸に飛び込み、渾身の「おかえりなさい」を告げる。これまでほとんど感情を見せてこなかった芙美子も、深見を前に涙を隠せなかった。目の前に大好きな人がいる。そのことを確かめるように、お互いの頬や腕に優しく触れるなつ美たちの姿を見て、涙で画面が滲んでいった。こんなにも自分ごとのように彼らの再会が嬉しいのは、これまでの物語の積み重ねがあったからこそだろう。

『波うららかに、めおと日和』最終回は、夫婦の絆、離れている間の不安、そして再会の喜びという、普遍的な愛の形を深く描いた。短い時間でも、共にいられる瞬間がいかに特別でかけがえのないものであるか。そして、どんな困難な状況下でも、大切な人を想う心は揺るぎないというメッセージを強く胸に刻んだフィナーレだった。